「よし、ここだ!」
ラーンが興奮気味に叫び、イシェは眉間にシワを寄せた。そこは遺跡の入り口、崩れかけた石段が続く暗い通路だった。
「また、そんな危険な場所? ラーン、少しは慎重に」
イシェはいつも通り冷静に言った。ラーンの行動は計画性なく、まるで子供のように衝動的だ。
「大丈夫だって! 今回はきっと大穴がある気がするんだ!」
ラーンは剣を構え、石段へ足を踏み入れた。イシェはため息をつきながら、テルヘルの後について続いた。テルヘルはいつものように無表情で、周囲を見回しながら歩を進めていた。
遺跡内部は薄暗く、湿った冷気が漂っていた。時折、石が崩れ落ちる音が響き、不安な雰囲気を掻き立てる。ラーンは先頭を切って進んでいくが、イシェの鋭い視線を感じると、少しだけペースを落とした。
「ここからは特に注意しろ」
テルヘルが低い声で言った。
「この遺跡には防御の仕掛けがあると記録されている。罠の可能性もある」
イシェは緊張した面持ちで周囲を警戒した。ラーンの無茶な行動にいつもハラハラするのだ。
「大丈夫だ、イシェ。俺がしっかり守るから」
ラーンは胸を張って言った。しかし、その言葉は空虚なものに聞こえた。彼の剣技は確かに優れていたが、防御よりも攻撃的なスタイルだった。
すると、突然、通路の壁から光が放たれ、床に幾筋もの線路が現れた。
「うっ!」
ラーンはバランスを崩しよろめいた。イシェは素早くラーンの腕をつかみ、引きずり戻した。
「これは…!」
テルヘルは眉をひそめた。壁から放たれた光は、防御の魔法だった。遺跡を守護する仕掛けだ。
「気をつけろ! 罠だ!」
イシェが叫んだ。その瞬間、床に現れた線路が活性化し、鋭い刃が飛び出してくる。ラーンとイシェは身をかわすのがやっとだった。
「くっ…!」
ラーンの顔色が変わった。彼は防御を意識したことがなく、攻撃ばかりを考えていたため、この状況に対応できなかったのだ。
「ラーン!」
イシェは叫びながら、ラーンを引っ張り上げた。テルヘルも剣を抜いて、周囲に注意を払い始めた。
3人は危機を逃れることができたが、遺跡の奥にはさらに多くの危険が待ち受けていることは明らかだった。