ラーンの大斧が石の壁を砕き、埃が舞う中、イシェは眉間に皺を寄せながら古い巻物に目を落とす。「ここには何もない…また無駄足だったんじゃないか?」
「おいおい、イシェ。まだ諦めるのは早すぎるぜ!」ラーンは陽気に笑ったが、彼の声にも少しだけ疲れの色が滲んでいた。最近の遺跡探索はことごとく空振りに終わり、資金も底をつきかけている。
テルヘルは鋭い視線で周囲を警戒しながら言った。「この遺跡の構造…どこか不自然だ。単なる墓所ではないかもしれない。」
イシェは巻物をもう一度広げ、古びた文字列を確かめる。彼女の視線が一つに絞り込まれた瞬間、息をのんだ。「ここ…ここに書かれているのは…」
「何だ?」ラーンの声は少し高くなった。
イシェはゆっくりと口を開いた。「この遺跡…かつてはヴォルダンの Healer(治癒者)が治療を行うための施設だったようだ。」
Healer はヴォルダンでさえも失いたくない存在。彼らは病を癒すだけでなく、命を延ばす力を持ち、「不死」に近づく者もいると言われた。
「Healer…」テルヘルは呟き、瞳孔が狭まった。「もしあの Healer の記録が残っていれば…。」
ラーンは彼女の言葉を察し、興奮したように言った。「そうか!もしかしたら、ヴォルダンを倒す鍵がここに隠されているのかもしれない!」
イシェは少し不安げな表情で言った。「でも、Healer は強力な力を持ち、その記録を守るために多くの罠が仕掛けられているはずだ。安易に手を出すべきではない。」
テルヘルは静かに頷きながら、剣の柄を握りしめた。「リスクはある。だが、ヴォルダンへの復讐を果たすためには…どんな危険もいとわない。」
彼女の言葉にラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らはそれぞれの理由でこの遺跡に挑んできたが、今は共通の目標に向かって歩むことを決意していた。 Healer の記録、そしてヴォルダンとの戦いを前に、彼らの運命は大きく動き出すこととなるだろう。