ラーンが巨大な石の扉を押さえつけた時、埃っぽい空気が充満した部屋に広がった。イシェは鼻をつまんで「またここか…」と呟き、懐中電灯の光を壁に当てた。壁一面には、複雑に絡み合った線刻画が施されていた。
「何だこれ…」ラーンは眉間にしわを寄せながら、指で線刻をなぞった。「古代の呪文かな?」
「そんなものじゃないだろう」イシェは懐疑的に言った。「遺跡調査の資料にも載っていなかった記号ばかりだ。もしかしたら、ヴォルダンが隠した何かかもしれない」
ラーンの顔色が一瞬曇った。「ヴォルダンか…」彼は呟きながら、剣を構えた。「ここは危険な場所だな。気をつけろ、イシェ」
その時、後ろから声が聞こえた。「おや、珍しいものですね。こんなところに遺跡好きが集まっているとは」
振り返ると、背の高い女性が立っていた。黒曜石のように光沢のある黒い髪を、銀色の装飾品で留めていた。鋭い眼光は、まるで氷の刃のように冷たい。
「お前は…」ラーンは眉をひそめた。「あの闇市で噂になった…」
「テルヘルです」女性は微笑んだ。「お約束通り、遺跡探索のお手伝いをします。もちろん、報酬も忘れずに」
イシェがテルヘルに疑いの目を向ける中、ラーンの目は輝いていた。「よし、じゃあ早速始めようぜ!」彼は石の扉に駆け寄り、「古代の財宝を掘り当ててやる!」と叫んだ。テルヘルは静かに笑みを浮かべながら、彼らを追いかけた。
深く暗い遺跡の中、彼らの冒険が始まった。