ビレーの朝焼けが空を茜色に染める頃、ラーンはいつものようにイシェを起こしに来た。「起きろ起きろ!今日は大穴が見つかる予感がするぜ!」彼の甲高い声がイシェの小さな部屋に響き渡る。イシェは眠い目をこすりながら、「またそんな夢でも見たのか」とぼやくが、ラーンの熱気に押されて結局はベッドから這い上がる。
「今日はテルヘルが来るんだろ?あの女性は本当に大穴を知っているのかね…」イシェは呟きながら着替えを始めた。テルヘルは謎が多い女だ。ヴォルダンへの復讐を誓うという過去と、その目的のためなら手段を選ばない冷酷な性格は、ラーンとイシェには理解できないものだった。
ビレーの広場ではすでにテルヘルが待っていた。黒曜石のような瞳に鋭い光を宿し、薄暗いマントを翻しながら、何やら地図を広げている。「今日の遺跡はここだ。ここはかつてヴォルダン軍が調査していた場所らしい。何か重要な遺物がある可能性が高い」彼女は地図をラーンとイシェに見せた。
「また危険な遺跡か…」イシェはため息をついた。テルヘルが探す遺跡はいつも危険ばかりだ。だが、高額な報酬に惹かれて仕方なく従うしかない。ラーンのように無邪気に冒険を楽しんでいるわけにはいかないのだ。
「よし!準備はいいか?」ラーンは剣を手に取り、目を輝かせた。イシェは Sighしながら、彼の手にかかる道具袋を受け取った。テルヘルは静かに頷き、三人は遺跡へ向かった。
遺跡の入り口は崩れかけており、不気味な影が伸びていた。「ここはヴォルダン軍が撤退する際に爆破したらしい」テルヘルが説明する。「だから注意深く進まないと…」彼女の言葉は途中で途絶えた。
突然、地面が激しく揺れた。ラーンはバランスを崩しよろめき、イシェは転んでしまった。その時、遺跡の奥から轟音が響き渡り、壁の一部が崩れ落ちた。
「逃げろ!」テルヘルの叫び声と共に、三人は慌てて遺跡の外へ飛び出した。崩落した壁から、何かの光が漏れていた。ラーンは振り返ると、そこには巨大な石棺が姿を現し始めた。石棺の表面には複雑な文様が刻まれており、その中心には輝く宝石が埋め込まれている。
「大穴…?」イシェは息を呑んだ。「まさか…」ラーンの顔も驚きと興奮で歪んでいた。テルヘルは冷静に状況を判断し、「これはヴォルダンが隠した遺物だ。我々はこの遺跡に先に来たのだ」彼女は剣を抜いて石棺へと歩み寄る。
三人は互いに顔を見合わせた。彼らの運命は、この遺跡に眠る謎の遺物によって大きく変わろうとしていた。「開始」