ラーンの大斧が岩壁を切り裂き、埃埃舞う中、イシェが慎重に足場を確認する。ビレーから少し離れた遺跡では、いつもより深く潜っていた。テルヘルは背後から「急いでいる」と冷たく言い放つ。
「分かってるって!でも、こんな狭い場所じゃ剣も振りにくいしなぁ」ラーンが愚痴をこぼすと、イシェは小さくため息をついた。
「あの日、ヴォルダンに襲われた時と同じように狭い道に追い詰められたら…」イシェの言葉は途絶えた。テルヘルは一瞬だけ目を閉じ、過去の痛みを思い出したようだった。
「だから急がないと」テルヘルの声が氷のように冷たかった。「目標の場所まであと少しだ」
彼らは狭くて暗い通路を進み、ついに広がる空間に出た。中央には石畳が敷かれ、壁一面に古代文字が刻まれている。
「これは…!」イシェは興奮を抑えきれない声で言った。「未確認の遺跡の図面にも記録がない場所だ!もしかしたら…」
だが、その瞬間、床から水が噴出してきた。ラーンの足元を滑り、彼はよろめきながらバランスを失った。イシェが咄嗟に手を伸ばし、彼を支えた。
「気をつけろ!」テルヘルは剣を抜いた。「何かがいる!」
影が壁に揺らめき、巨大な影が彼らを襲いかかる。ラーンは慌てて立ち上がり、剣を構える。だが、その影は突然消えた。
イシェが目を凝らして壁を見つめる。そこに刻まれた古代文字がわずかに光り始めた。「これは…」と呟くイシェの言葉は、テルヘルもラーンも理解できなかった。
その時、イシェの頭の中に閃きが走った。あの古代文字、まるで…音楽譜のように見える!そして、そのメロディーが頭の中で鮮やかに再生された。
イシェは慌てて石畳を叩き始めた。指先が古代文字の上を滑り、リズムに合わせて音を奏でる。すると、壁の影が再び動き出した。今度は、巨大な影ではなく、小さな光がゆっくりと浮かび上がってきた。それは、まるで…星のように輝いていた。
「何だこれは…」ラーンが目を丸くする中、イシェは静かに手を止めた。光は空中に集まり、やがて一つの形を成した。それは、古代の地図だった。