「よし、行こうか!」ラーンが大きな声で言った。イシェはため息をつきながら、彼の後を続けた。遺跡の入り口付近まで来ると、テルヘルがすでに待っていた。「今日はこの遺跡だ。内部構造の情報はほとんどない。慎重に進もう」テルヘルの言葉にラーンはうなずいた。イシェは地図を広げ、複雑な迷路のような通路を指さした。「ここだとあの部屋につながるはずだ。そこに遺物が眠っているらしい」
彼らは遺跡の中へ足を踏み入れた。薄暗い通路には埃が積もり、壁には不思議な文様が見えた。「ここは一体何だったんだろうな…」ラーンが呟くと、イシェは「誰にもわからない。でも、きっと何か意味があるはずだ」と答えた。テルヘルは黙って先を歩いていった。彼女の目は鋭く、周囲を警戒しているようだった。
彼らは数時間かけて迷路のような通路を進んでいった。やがて、巨大な石の扉に辿り着いた。「ここが目標だな」ラーンが興奮気味に言った。イシェは扉の表面にある複雑な模様を注意深く観察した。「何か仕掛けがあるかもしれないぞ」と彼は言ったが、ラーンは聞く耳を持たず、力任せに扉を開けようと手をかけた。
その時、テルヘルが彼を制止した。「待て!」彼女は扉の側面にある小さな石を押すと、扉がゆっくりと開いた。その中には、金銀財宝でいっぱいの部屋が広がっていた。「やりました!大穴だ!」ラーンは大喜びで部屋に飛び込んだ。イシェも目を丸くして驚いていた。
しかし、テルヘルは少しの間立ち尽くした後、ゆっくりと部屋の中へと入った。彼女は宝の山を無視し、奥にある小さな石棺に向かった。その中には、老いた男の遺体が眠っていた。「ついに…」テルヘルは呟き、石棺から小さな瓶を取り出した。瓶の中には、赤い液体が封じられていた。「これで、ようやく復讐の時が来た」
ラーンの興奮もイシェの驚きも、テルヘルの心に届くことはなかった。彼女は瓶を握りしめ、静かに遺跡を出た。彼女の目は燃えるような炎でいっぱいだった。それは、ヴォルダンへの復讐への執念、そして、かつて彼女から奪われたものを取り戻すという決意の表れだった。