ビレーの tavern の薄暗い中で、ラーンは粗雑な酒を喉に流し込んだ。イシェはいつものように眉間に皺を寄せ、帳簿のようなものを広げている。
「また赤字か?」ラーンの言葉にイシェは小さく頷いた。「遺跡の深部まで進むには費用がかさむ。特に今回はテルヘルが要求した特殊な道具も必要で…」
テルヘル。その名前を口にするだけでラーンは気分が悪くなった。彼女の冷酷な瞳と、常に張り詰めた空気を思い出したからだ。ヴォルダンへの復讐のために、彼らは彼女の手駒に過ぎないのだ。
「あの女の言う通り、大穴を見つけるにはこの程度の苦労も仕方ないだろう」ラーンは自分を納得させるように言った。イシェは何も言わず、帳簿を閉じると tavern の外へと消えていった。
ラーンの視線は、壁に飾られた古い地図に向かった。そこには、ビレーの周辺地域と、その奥深くにある未踏の地が記されていた。地図の端には、かすれた文字で「禁断の地」と記された場所があった。
「いつかあの地に足を踏み入れるんだ」ラーンは呟いた。彼の胸に、冒険への渇望と、どこか切ない孤独感が広がっていった。イシェやテルヘルと一緒に遺跡を探索する日々も悪くないが、彼にはもっと何かを求めるものがあった。それは、自分自身の力で運命を切り開くこと、そして、この長大な旅路の果てにある、真の宝を見つけることだった。