ラーンの大斧が石壁に食い込み、埃を巻き上げた。イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れかけた天井を見つめていた。「ここじゃない。また違う場所だ。」彼女は冷静に言った。ラーンは肩をすくめ、汗で濡れた髪を額から払いのけた。「よし、じゃあこっちだ！」と、彼は別の通路へと足を踏み入れた。
テルヘルは後方から彼らを追いかけ、鋭い視線で周囲を観察していた。ヴォルダンからの復讐を果たすためには、この遺跡に眠る遺物が必要不可欠だった。彼女は自分の過去を思い出す度に胸が締め付けられる。鏡のようなあの日の光景。奪われた全て。そして燃えるような憎しみの炎。
イシェはラーンの後ろを歩きながら、地図を広げて確認していた。「ここからは迷路みたいだな」彼女は呟いた。ラーンは「迷路だって、出口があるだろ！」と豪快に笑うが、イシェは彼の無謀さにため息をついた。テルヘルは二人のやり取りを静かに見ていた。彼らの関係性、まるで鏡のように対照的でありながら、どこかで繋がっているように見えた。
彼らは迷宮のような通路を進んでいくうちに、奇妙な石像を発見した。それは歪んだ形をしており、まるで人の顔と動物の顔が組み合わさったような不気味なものだった。イシェは背筋が凍るような感覚に襲われた。「何か変だ…」彼女は呟いた。ラーンは興味津々に石像に近づき、その表面をなぞり始めた。すると、石像の目が光り始め、ゆっくりと動き出した。
「何だこれは！」ラーンの叫び声が洞窟に響き渡る。石像は彼に向かって襲いかかってきた。ラーンは慌てて大斧を振り下ろしたが、石像は軽々と避け、彼の腕を掴んだ。イシェは驚いて声を上げ、テルヘルが素早く剣を抜いて石像に切りかかった。しかし、石像は硬く、剣が跳ね返ってしまった。
その時、ラーンが石像の顔に目を凝らした。「おい、これ…」彼は一瞬言葉を失った。「この顔…見たことあるぞ」イシェとテルヘルも彼の視線に驚き、石像の顔を見つめた。そこには、驚くべきことに、ラーンの顔そのものが歪んで刻まれていた。まるで鏡のように、彼自身を映し出しているかのようだった。
三人は恐怖と混乱の中で、石像から逃げるように洞窟から逃げ出した。彼らの背後からは、石像の不気味な笑い声が響き渡っていた。