ラーンが石化した巨人の顔の鼻の下に足を踏み入れようとした時、イシェが制止した。「待て、ラーン。あの隙間、何か違うぞ」。イシェは眉間に皺を寄せ、慎重に巨人の顔周りを一周した。「ここには何かあるはずだ。鍵穴のようなものが必要な気がする」
ラーンの無邪気な瞳はイシェの言葉に一瞬曇り、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。「またお前が細かすぎるんだよ、イシェ。早く宝探しを始めないと日が暮れるぞ」。しかし、イシェの直感は鋭かった。巨人の顔の鼻の下には確かに奇妙な溝があり、まるで何かを嵌めるように作られたようだった。
「何か、あるはずだ…」。テルヘルは冷静に状況を見極めた。「ラーン、少し待て。イシェの言う通りだ。あの溝はただの装飾ではないだろう」。彼女は小柄な体で巨人の顔の周りを駆け巡り、指先を溝に沿わせて確認した。「確かに鍵穴のような形だ。何かを差し込む必要がある」
イシェは持ち合わせていた道具箱から小さな金属製の棒を取り出した。「これなら合うかもしれない」。彼は慎重に溝に棒を差し込んだ。すると、巨人の顔の目から赤い光が点滅し始めた。そして、壁一面に刻まれた複雑な模様がゆっくりと動き出す。
「これは…！」イシェは目を丸くした。その光景はまるで、眠りから覚めた巨大な機械の心臓部を見ているようだった。ラーンは興奮気味に笑った。「よし！これで宝が手に入るぞ！」 しかし、テルヘルは表情を曇らせた。「まだだ。これは入り口に過ぎない。鍵穴は一つではない」
彼女は巨人の顔の他の部分にも目を向け、慎重に探求していく。そして、巨人の口の中に小さな凹みを見つけ出した。そこにも鍵穴があったのだ。