「よし、今日はあの崩れかけた塔だな!」ラーンが地図を広げると、イシェは眉をひそめた。「またあの危険な場所? 何も見つからない可能性もあるのに…」 ラーンの豪快な笑い声と、イシェの冷静な指摘がビレーの賑やかな市場に溶け込んでいく。
テルヘルは両者のやり取りを冷ややかに見ていた。彼女の目的は遺跡探査ではなかった。あの塔にはヴォルダンとの戦いに繋がる何かがあると確信していたのだ。
「鍵」
イシェが呟くように言った言葉に、ラーンとテルヘルは同時に耳を傾けた。イシェは塔の内部構造図を広げながら説明を続けた。「この崩れた部分から侵入できるらしいけど、奥深くには謎の扉があるんだって。その扉を開けるには特殊な鍵が必要なんだそうだ」
ラーンの顔色が明るくなる。「つまり、宝の鍵ってやつか! これは大穴になるかも!」テルヘルは冷静に言った。「鍵の詳細を詳しく調べろ。あの塔にはヴォルダンが何らかの目的で関与している可能性がある。我々の目標もそこに近づくことになるだろう」
日暮れ時、三人は塔に向かって歩を進めた。崩れかけた石造りの階段を登ると、薄暗い内部へと続く通路が現れた。ラーンの剣が光り、イシェの足取りは慎重だ。テルヘルは二人が進む様子を静かに見守る。塔の奥深くで、ヴォルダンとの戦いに繋がる鍵が眠っている。そして、その鍵は彼らの人生を変えることになるだろう。