「よし、今回はあの崩れかけた塔だな!」ラーンが目を輝かせ、地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せながら、塔の構造図を確認した。「あの塔は崩落寸前だって聞いたぞ。危険すぎるんじゃないか?」
「大丈夫だ。俺が先頭を切って道を切り開くから」ラーンは自信満々に笑った。彼の鍛え上げられた腕には、数々の遺跡探検で得た傷跡が刻まれていた。イシェはため息をつきながらも、地図を片手にラーンの後を追うことにした。
ビレーの街はずれにある廃墟となった塔は、かつて栄華を極めた文明の残骸だった。その内部には、貴重な遺物や忘れ去られた技術が眠っているという噂があった。しかし、何世紀にもわたる自然の侵食と崩壊で、塔は危険な迷宮へと変貌していた。
テルヘルは後ろから二人の様子を見つめていた。彼女は鋭い視線で塔の構造を分析し、ラーンとイシェの動きを常に警戒していた。彼女の目的は遺跡探検ではなく、ヴォルダンに復讐するための情報収集だった。そのために、彼女はあらゆる手段を使う覚悟を決めていた。
「気をつけろ、イシェ!」ラーンの叫び声が響き渡った。崩れかけた床板が割れ、イシェはバランスを崩しそうになった。だが、彼女は素早い身のこなしで危機を回避した。長年の鍛錬によって培われた彼女の反射神経は、この危険な遺跡探検において大きな助けとなっていた。
「お前は本当に慎重だな」ラーンはイシェを助けながら言った。「もっと大胆に動けよ!」
「慎重さは生き残るための武器だ」イシェは冷静に答えた。「特にこんな危険な場所ではなおさらだ」
彼らは塔の奥深くへと進み、ついに謎の部屋へとたどり着いた。そこには、埃をかぶった石棺が安置されていた。ラーンが興奮気味に石棺に近づくと、テルヘルが彼を制止した。「待て!」彼女は警告を発する。「この石棺は触れない方がいいぞ」
彼女の直感は正しかった。石棺に触れた瞬間、部屋全体が震え始めた。壁から鋭い棘が生え出し、ラーンとイシェを襲いかかってきた。彼らは慌てて逃げようとしたが、すでに遅かった。
「やれやれ、こんな罠にはまるとは」テルヘルは冷めた声で言った。彼女はすでに準備万端だった。彼女の体からは黒曜石の光が放たれ、棘を打ち砕いた。彼女は長い鍛錬によって得た魔法の力を使いこなすことで、この危機を乗り越えたのだ。
ラーンの無謀な行動とイシェの慎重さ、そしてテルヘルの冷酷な策略。三人はそれぞれ異なる目的を持ちながら、危険な遺跡に挑んでいった。彼らの運命は、まだ見ぬ大穴へと続く道の上で交錯していくことになるだろう。