「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂では地下深くで何かが見つかったらしいぞ」ラーンが目を輝かせながら地図を広げる。イシェは眉間にしわを寄せながら、地図の端を指さした。「また噂話に騙されるんじゃないだろうな?あの塔は危険だって聞いたぞ。それに、最近遺跡探索許可が下りづらくなってるんだ」
「大丈夫だ!俺が行くなら安全だ!」ラーンは自信満々に胸を叩き、イシェに目を向けると、少しだけ真剣な表情になった。「それに、今回はテルヘルさんが高い報酬を約束してくれたんだよ?あの塔の奥にあると噂される遺物は、鍛冶屋にも喜ばれるものらしいぞ。大金になるかもしれない」
「そうか…」イシェはため息をつきながら、ラーンの言葉に少しだけ心が揺れた。確かに、最近ビレーの鍛冶屋が材料不足で困っているのは事実だ。あの塔の奥に眠る遺物が、彼らの窮地を救うものなのかもしれない。
テルヘルは静かに地図を眺めながら言った。「準備はいいか?今回は特に注意が必要だ。ヴォルダンからの情報によれば、最近その辺りでは不穏な動きがあるらしい」
ラーンは剣を手に取り、イシェも慎重に装備を整えた。ビレーの鍛冶屋のために、そして自分たちの未来のためにも、彼らは危険な遺跡へと足を踏み入れることを決意した。