日差しが容赦なく照りつける中、ラーンは汗だくになりながら岩壁の隙間を登っていた。
「イシェ、どうだ? 上から見れるか?」
イシェはラーンの足元にある崩れかけた石柱に腰掛け、地図を広げていた。「まだだ。あと少し上だな。」彼女の視線は地図から離れない。ラーンが登っている岩壁の場所、そして地図に記された遺跡の構造図を照らし合わせながら、慎重に次のルートを考えているようだった。
「あいつはいつもこうだ」
テルヘルは後ろで呟いた。ラーンの無計画さに呆れながらも、どこか諦めたような口調だ。「あの遺跡の地図は偽物だったんじゃないのか?」
「偽物?そんなわけないだろ!ビレーの老人が譲ってくれたんだぞ!あいつは昔、この遺跡を探検したことがあるらしい」
ラーンの声が岩壁の隙間から聞こえてくる。彼は地図を手に入れたことに自信満々だ。しかしイシェは眉間にしわを寄せながら地図を眺めていた。
「あの老人は…?」
テルヘルが言いかけたその時、突然岩壁の上部から崩れ落ちる音がした。ラーンはバランスを崩して岩肌に叩きつけられる。
「ラーン!」
イシェは慌てて立ち上がり叫んだ。しかし、ラーンはすでに意識を失っていた。
「くそ…」テルヘルは舌打ちしながら、地面に落ちたラーンの剣を拾い上げた。「地図が偽物だったとしても、あいつが命を落としたら元も子もない」
彼女はイシェに駆け寄るように近づき、冷静に状況を判断した。「イシェ、あの崩れた場所から何か見えているか?」
イシェは目を細めて崩れた岩の隙間を覗き込んだ。「何もない…ただ、少し奥にある部屋のようなものが見える…」
テルヘルはラーンの意識が戻らないことを確認すると、イシェに指示を出す。
「よし、私も行く。あの部屋の中を探して、何か手がかりになるものがないか探せ。」
二人は崩れた岩の隙間を慎重に抜け、暗い部屋へと足を踏み入れた。部屋の中は埃まみれで、薄っすらと光が差し込むだけで中はよく見えなかった。イシェは懐中電灯を取り出して周囲を照らしていくと、壁には奇妙な模様が刻まれていたことに気がついた。
「これは…?」
イシェが壁の模様を指さすと、テルヘルも興味深そうに覗き込んだ。しかし、二人はその模様の意味を理解することができなかった。
「何だろう…」
イシェは呟きながら、模様をさらに詳しく観察する。すると、ある部分にわずかに変化があることに気がついた。まるで、模様の一部が少しだけ沈んでいるのだ。
「これは…!」
イシェは興奮気味に声を上げた。「これは仕掛けかもしれない!何か開く場所があるのかも…」
テルヘルもイシェの言葉に心を躍らせた。もしこの部屋に何か重要なものがあれば、ラーンの命を危険に晒したことも無駄になるかもしれない。二人は力を合わせて、模様を慎重に調べ始めた。しかし、その瞬間、壁の一部分が突然崩れ落ちた。
崩れた壁の下から、奇妙な光が漏れてきた。イシェとテルヘルは息をのんで見つめる。そして、ゆっくりと崩れた壁の隙間を覗き込んだ。そこには…