ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑いかけた。イシェは眉間にしわを寄せながら彼の肩を叩いた。「またそんな大口叩くなよ。今日の報酬で食料と酒を買い足すのが精一杯だろう」。ラーンは気にも留めず、杯を傾け続ける。「いつかあの遺跡から大穴を掘り当ててやるんだ！そうすればお前も好きなだけ贅沢ができるぞ！」
イシェはため息をついた。ラーンの夢はいつまでも変わらない。だが、現実には今日も遺跡探索で得たのは錆びついた剣と欠けた石版だった。それでも、イシェはラーンの後ろ姿を見つめるうちに、少しだけ希望を感じた。
「よし、次の目標はあの山脈の奥にある廃墟だ！」ラーンの声に引き戻されたイシェは、テルヘルとの取引を思い出した。彼女は遺跡から持ち出した遺物について詳細な情報を求めていた。「錬化」と呼ばれる技術で、古代の遺物は現代の道具に変換できるという。テルヘルはそれを利用してヴォルダンへの復讐を果たそうとしているのだ。イシェは彼女の目的には賛同できないが、ラーンを巻き込まないように気をつけなければと思った。
「準備はいいか？」ラーンの問いかけに、イシェは小さく頷いた。遺跡の奥深くで、彼らがまだ知らない真実が眠っているのかもしれない。そして、その真実がラーンの夢を叶える鍵になるのかもしれない。