鈍痛

鋭くはないがしつこく続く痛み。

物語への影響例

慢性的苦痛の心理学。適応と諦めの狭間。持続する不快の変容作用。

生成サンプル(サンプルの仕様

ラーンの右腕が鈍痛を訴えた。遺跡の奥深くへと続く通路の壁は、荒れた石畳と違い、滑らかに削り出された黒曜石で覆われていた。その冷たさが手に伝わり、まるで体の一部を奪い取ろうとするかのように感じた。イシェは後ろから「大丈夫?」と声をかけたが、ラーンは軽く頷くだけで答えることさえためらった。

彼にとって、遺跡探検はいつも新鮮な刺激と同時に、痛烈な現実を突きつけられるものだった。夢を語る彼の口癖と裏腹に、実際には得られるのは埃まみれの破片と、日々の疲労だけだった。それでも、イシェやテルヘルと共にこの遺跡に踏み込んだのは、どこかで希望の光を見いだせると信じていたからだろう。

「ここからは慎重に」

テルヘルの低い声が響き渡った。彼女は石畳の上を足音立てずに滑るように歩みを進める。その姿はまるで影のように溶け込み、ラーンの鈍痛をさらに深くさせる。彼女には何か隠されている秘密があると感じた時もあったが、そんなことは今さら考える余裕もなかった。

黒曜石の壁に刻まれた複雑な模様が目に飛び込んできた。イシェが懐から持ち出したランプの光が、その模様を歪ませるように照らしていく。

「これは...」

イシェは目を丸くし、壁に向かって手を伸ばした。しかし、その瞬間、床が崩れ落ちた。ラーンは反射的にイシェを引き寄せ、自身は黒曜石の床に叩きつけられた。鈍痛は全身を駆け巡り、息が詰まりそうになった。

「イシェ!」

ラーンの叫び声は、崩落した床の下へと消えていった。彼は必死に視界を戻そうとした。イシェの姿が見えない。彼の頭の中で、テルヘルの冷たい視線と、ヴォルダンへの復讐という執念が渦巻いた。そして、その中で、彼の鈍痛だけが、静かに響き続けた。