「よし、ここだ!」ラーンの声がビレーの賑やかな市場を一瞬で静かにした。イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの指さす方向を見た。そこには、錆びついた石碑が半分埋まった状態で立っているだけだった。
「またか、ラーン。遺跡探しの仕事じゃないだろう」イシェはため息をつきながら言った。「こんな場所で金脈が見つかるわけないだろ」
ラーンはニヤリと笑った。「イシェったら、いつも pessimistische だね!ほら、あの石碑の刻まれた文字、よく見ろよ。古代語で書かれてるんだぞ!」
イシェは仕方なく石碑に近寄った。確かに、そこにはかすれた文字が刻まれていた。しかし、イシェには解読できないものだった。「何て書いてあるのかさっぱりわからない」
その時、背後から冷たく響く声がした。「ヴォルダン帝国語だ」。テルヘルが鋭い目で石碑を睨んでいた。彼女は薄暗い市場の光で顔を隠すようにフードをかぶっていたが、その目は鋭く輝いていた。「この文字は、かつてヴォルダンの征服者たちがこの地に築いた砦の記録だ」
ラーンは興奮気味に言った。「つまり、この近くに砦があったってことか!?もしかしたら、財宝が残されているかも!」
テルヘルは冷静に言った。「砦跡であれば、金脈の可能性も高い。だが、ヴォルダン帝国の遺跡は危険だ。罠や守護魔物がいる可能性もある」
イシェは不安げに言った。「そんな危険な場所に行く必要はないんじゃないか…」
ラーンの瞳は輝いていた。「いや、行くべきだ!あの石碑が示す場所に金脈があるかもしれないんだぞ!大穴を掘り当てて、ビレーの街をもっと豊かにするんだ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後ろに続くことにした。テルヘルもまた、自身の目的のために遺跡探検が必要だと考えていた。三人は、市場の人々の視線を背に、古代の石碑へと近づくにつれ、それぞれの欲望と不安が渦巻く空気をまとっていた。