ラーンの重い足音がビレーの石畳を響かせた。イシェが振り返り、眉間に皺を寄せた。「また遅刻か?テルヘルは待っていられないだろう」
「気にすんな。あの女はいつも不機嫌だ」ラーンは陽気に笑ったが、イシェは彼の表情に隠された緊張を察知した。最近、テルヘルの要求はエスカレートしていた。危険な遺跡ばかり指定され、報酬も増える一方だが、何か裏があるような気がしてならない。
「今回は一体何の遺物なのか?」ラーンの背中に、イシェが呟いた。「あの金属音がする遺跡だって、本当に安全なのか?」
ビレーから少し離れた、深い森に囲まれた遺跡。朽ちた石造りの門をくぐると、そこは異様な静けさだった。空気が重く、地面は湿り気のある土と、錆び付いた金属片で埋め尽くされていた。
「あの音は...」イシェが耳を澄ませる。「まるで...呼吸しているような」
ラーンの剣が光った。「気をつけろ」
テルヘルは遺跡の奥深くにある巨大な石棺の前に立っていた。その周りには、無数の錆びた金属片が散らばり、不気味に光り輝いている。
「ここに眠っているのはヴォルダンの武器だ」テルヘルは静かに言った。「お前たちに奪い返して欲しい」
ラーンは石棺の蓋を押し開けた。その中には、黒曜石のような金属でできた剣が刺さっていた。剣に触れた瞬間、金属音が大きく響き渡り、空気が激しく震えた。
「これは...!」イシェの声が震える。「何か邪悪なものが宿っている」
ラーンの顔色が変わった。「気をつけろ!何かが起きる!」
石棺から黒い煙が立ち昇り、剣がゆっくりと動き始めた。金属音が轟き、地面が割れ始めた。
「逃げろ!」テルヘルが叫んだ。
三人は剣の動きに追われながら、遺跡から必死に逃げる。後ろから聞こえる金属音は、まるで生きているかのように彼らを追いかけてくる。