ラーンが「大穴!」と叫び、石化した巨大な獣の骨の上に飛び乗った時、イシェは眉間に皺を寄せた。「またか、ラーン。あの骨は三ヶ月前からずっとそこに転がっているだろう」
ラーンの興奮はすぐに冷めた。「そうだな…でも、もしかしたらその下に何かあるかも!ほら、イシェも見てごらんよ、この骨の隙間から光が漏れているぞ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後を続けた。テルヘルは静かに壁に沿って進み、鋭い視線で周囲を観察していた。「注意しろ。ここには何らかの仕掛けがあるかもしれない」と彼女は警告した。
ビレーの遺跡は、野火のように燃え上がるような危険と、ひっそりと眠る宝の両方を秘めていた。ラーンはその危険を軽視し、宝だけを追い求めたが、イシェは常に冷静さを保ち、テルヘルは目的のためならどんな手段も厭わなかった。
今回は、古代文明が遺した迷宮に挑んでいた。壁には複雑な文様が刻まれ、床には光る結晶が埋め込まれており、どこまでも続くような広大な空間だった。
「ここはまるで別の世界みたいだな…」ラーンは目を輝かせた。イシェは、彼の言葉に少しだけ同意した。確かに、この遺跡は普段のビレーとは違う、どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。
突然、床から炎が噴き上がった。ラーンの足元をかすめるように燃え上がり、壁に広がる文様を赤く染めた。イシェは素早くラーンを引き寄せ、「罠だ!」と叫んだ。
炎の影が揺らめく中、テルヘルは冷静に状況を分析した。「この炎は自然発生的なものではない。何かが制御しているはずだ」彼女は剣を抜き、周囲を警戒しながら言った。「注意しろ。敵が現れるかもしれない」
その時、遠くから獣の咆哮が聞こえた。その音は野火のように広がり、迷宮に恐怖をもたらした。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせ、戦いの準備を始めた。
テルヘルは静かに呟いた。「始まったな…」 そして、炎に照らされた彼女の顔には、復讐の炎が燃えていた。