「おい、イシェ、見てみろ!」ラーンが興奮気味に巨大な石の扉を指さした。壁一面に刻まれた複雑な文様が薄っすらと光り、扉の表面には奇妙な紋章が浮かび上がっている。「これは…大穴級じゃないか?」イシェは眉間にしわを寄せながら扉を慎重に観察した。
「確かに珍しい遺跡だ。だが、この紋章…"テルヘルが以前教えてくれたものに似ているぞ…」イシェの言葉にラーンの顔色が少し曇る。テルヘルはヴォルダンへの復讐を誓う謎の女性で、彼らの遺跡探索を支援していた。だが、その目的や過去についてはほとんど明かしておらず、ラーンは彼女に一抹の不安を抱いていた。
「よし、開けてみようぜ!」ラーンの言葉にイシェがためらいを見せた。「待て、ラーン!あの紋章は危険な何かを示唆しているかもしれないぞ。」しかし、ラーンは既に手を扉にかけた。「大穴だぞ、イシェ!財宝と栄光が待っている!」
イシェの警告を振り切って扉を開けた瞬間、激しい風が吹き荒れ、石室内は不気味な光に包まれた。壁には鮮血のような模様が浮かび上がり、床からは悪臭が漂い始めた。「なんだこれは…」イシェは恐怖で言葉を失った。
その時、背後から冷たい声が響いた。「面白い遺跡ですね。どうやら、ヴォルダンとのつながりがあるようです。」テルヘルが不気味な笑みを浮かべながら現れた。ラーンとイシェは彼女が持つ圧倒的な存在感に圧倒された。
「お前…何をするつもりだ?」ラーンの問いに対し、テルヘルは静かに答えた。「私はこの遺跡の秘密を暴き、ヴォルダンに復讐を果たすのです。そして、君たちもその一部となるでしょう。」
イシェはラーンを見つめ、恐怖と決意が入り混じった表情で言った。「ラーン…私たちは、本当に彼女について何も知らないのかもしれない…」その言葉にラーンの心には、重たい予感が影を落とした。
テルヘルは、まるでこの遺跡の真の姿を知っているかのような自信に満ちた目で、彼らを遺跡の中へと招き入れていった。そして、彼らの運命は、この遺跡の謎と共に、暗黒の淵へと落ちていくこととなる。