ラーンの粗雑な足音とイシェの静かなステップが、遺跡の石畳の上でこだました。薄暗い通路から差し込む光は埃を巻き上げ、彼らの視界を歪めた。テルヘルは二人が進む様子を後ろからじっと見つめていた。
「ここ、何か変だな」イシェは眉間に皺を寄せながら言った。「いつもと空気感が違う気がする」
ラーンは気にせず、宝箱に似た石棺に向かって歩み寄った。「何言ってんだ?大穴が見つかるかもしれないんだからワクワクするだろ?」
だが、彼の足が石棺に触れた瞬間、地面が激しく揺れ始めた。石畳から砂塵が舞い上がり、三人はバランスを崩してよろめいた。
「これは…!」テルヘルは驚愕の声を上げた。「重力制御装置だ!遺跡の奥深くで起動したに違いない」
その時、天井から巨大な石柱が落下してきた。ラーンは咄嗟にイシェを押し倒し、自身は石柱の直撃を受けた。
「ラーン!」イシェは叫びながら駆け寄った。だが、彼の視界は歪んでいて、意識が遠のいていくのを感じた。重力は彼らを容赦なく下に引きずり込んだ。
テルヘルは冷静に状況を判断した。「この重力制御装置は、遺跡全体を崩壊させるものだ。脱出するしかない!」
彼女はイシェの手を引き上げ、彼を無理やり立たせた。ラーンの姿が見えない。
「ラーン!」イシェは叫んだが、返事はなかった。
テルヘルはイシェに言った。「諦めるな!生き残るためだ!」彼女は彼を引っ張りながら、崩壊する遺跡の奥深くへと走り出した。重力は彼らの足をさらに地面に押し付け、息をするのも苦しい。だが、二人はまだ諦めないでいた。