「よし、今回はあの崩れた塔だな！噂には古代の魔導書が眠ってるって話だぞ！」ラーンの目が輝き、イシェはため息をついた。「また噂話か。そんなもの見つける前に、今日の食料代も稼げないんじゃないのか？」
「大丈夫、大丈夫！今日は必ず何か掘り出せる気がするんだ！ほら、テルヘルさんも言ってたろ？今回は高額な報酬だぞ！」ラーンはテルヘルの方を向いて言ったが、彼女は眉間にしわを寄せていた。「報酬は確かに高い。だが、遺跡探検は危険だ。食料配給の不足も深刻化している。命を落とすリスクを考えろ。」
イシェはテルヘルの言葉を聞いてうなずく。「ラーン、今回は少し慎重に行こうぜ。あの塔は崩落してて、安全確認が必要だ」
「わかったわかった！でもさ、もし魔導書が見つかれば、食料配給なんて心配いらないぞ！」ラーンの言葉にイシェは苦笑した。彼の楽観的な性格は、時にイシェを安心させることもあるが、今回は少し不安だった。
3人はビレーから離れた場所に位置する崩れた塔へと向かった。塔の周りには、かつての栄華を物語る石造りの壁の一部が散乱していた。ラーンは興奮気味に塔の中へ駆け込んだが、イシェは慎重に周囲を観察しながら続いた。テルヘルはいつも通り冷静沈着に、後ろから二人を見守っていた。
塔の中は暗く湿気ており、崩れた石や瓦礫が至る所に散らばっていた。ラーンは懐中電灯を手に持ち、足元を照らしながら進んだ。「ほら！何かあるぞ！」彼は壁の隙間から光る物体を発見し、興奮気味に叫んだ。
イシェが近づいてみると、それは金属製の箱だった。箱の表面には複雑な模様が刻まれており、古代の技術を感じさせるものだった。「これは...もしかしたら？」イシェは目を丸くした。ラーンは箱を引っ張り上げようとしたが、重くて動かなかった。「おい、重いぞ！」
その時、箱の上部から砂埃が舞い上がり、奇妙な音と共に開いた。箱の中から放たれた光は、塔の内部を一瞬にして照らした。そして、その光の中に、見慣れない文字が浮かび上がった。イシェは目を疑った。「これは...魔導書？」
ラーンの顔には興奮の色が宿っていたが、イシェは何か不吉な予感を感じた。テルヘルは冷静に状況を分析し、ゆっくりと口を開いた。「この文字...ヴォルダンで使われているものだ」