ラーンの大斧が岩盤を叩き割る音だけが、遺跡の静寂を破った。埃が舞う中、イシェは鼻をつまんで眉間にしわを寄せた。「また無駄な力加減だ。あの程度の石なら、少し慎重に崩せばいい。」
「いや、この岩には何かある気がするんだ!ほら見て!」 ラーンは興奮気味に、崩れた岩の奥から小さな金属片を取り出した。イシェが近づいてよく見ると、錆び付いたブロンズ製の歯車だった。「何だこれは…」
「わっかったぞ!これは古代文明の機械の一部じゃないか!?もしかしたら、この遺跡には巨大な自動装置が眠っているかも!」ラーンの目は輝き、イシェはため息をついた。
「また夢物語が始まった…」 しかし、イシェ自身もどこか期待を感じていた。彼らは、遺跡探索で得た遺物をテルヘルに売ることで生計を立てていた。テルヘルはヴォルダンとの戦いに必要な資金を得るため、貴重な遺物を求めていたのだ。
「よし、この歯車を元に、遺跡の構造を探ってみよう!」 ラーンの熱意に巻き込まれ、イシェも探査を始めた。彼らは互いに意見が異なることが多かったが、共通の目的意識と信頼関係で繋がれていた。
テルヘルは、その日の夜、三人が持ち帰った遺物を見て満足げな笑みを浮かべた。「これは価値がある。」彼女は、自分の計画を達成するために、彼らの力を必要としていた。しかし、同時に、彼らを利用するのではなく、共に歩んでいくという決意も胸に秘めていた。
「この遺跡には、もっと大きな秘密が眠っているはずだ。」 テルヘルは、三人が持つ可能性を見据えながら、静かに呟いた。「そして、その秘密を解き明かすことで、我々は未来を切り開くことができるだろう…」