ラーンが石の破片を蹴飛ばすと、イシェに鋭い視線を向けられた。「またか、ラーン。あの程度の遺跡で興奮するな」。イシェは冷静に地図を広げ、指を動かした。「ここからは慎重に。罠が多いらしいぞ」。ラーンの無謀さにいつも呆れていたイシェだったが、今回は少しだけ不安を感じていた。テルヘルが雇うようになってから遺跡の規模も難度も増したのだ。
「大丈夫だ、イシェ。俺が先導する」とラーンは豪快に笑った。しかし、彼の瞳にはどこか不確かな光が宿っていた。テルヘルからの依頼はいつも曖昧で、報酬も高額だった。今回は特にそうだった。
彼らは深い闇の中を進んだ。壁には奇妙な文様が刻まれており、不気味な光を放っていた。イシェは背筋に寒気を感じた。「ここは何か変だ…」と呟いた。ラーンは気にせず、剣を構えながら進み続けた。
突然、床が崩れ、ラーンは深い穴に落ちていった。「ラーン!」イシェが叫び、手を差し伸べたが、彼はもう見えなかった。穴から不気味な音が聞こえてきた。それはまるで、何かが喜びの声を上げているかのようだった。
「何だこれは…」イシェは恐怖で体が震えた。テルヘルは冷静に言った。「恐れる必要はない。これは我々が求めるものへの第一歩に過ぎない」。そして、彼女は邪悪な笑みを浮かべた。