「よし、行こう!」ラーンの豪快な声で、遺跡へと続く洞窟の入り口に足を踏み入れた。イシェはいつものように彼の後ろを少し遅れて、テルヘルが二人を見下ろすような視線を送る。
「今回は慎重に。あの遺跡は危険だぞ」イシェが念を押すと、ラーンは鼻で笑い、「大丈夫だ。俺が守ってやる!」と胸を張った。
洞窟の奥深くへ進むにつれ、空気が冷たくなり、湿り気を帯びてきた。壁には奇妙な模様が刻まれており、イシェは背筋がぞっとするような予感を覚えた。テルヘルは静かに周囲を警戒しながら、古い書物から得た情報をもとに道を進んでいた。
突然、ラーンの足元から砂埃が噴き上がり、巨大な蛇のような怪物が姿を現した。鋭い牙と赤く光る目、そして不気味なうなり声で、三人を襲いかかる。
ラーンは剣を抜き、勇敢に立ち向かった。だが、その怪物の力には及ばず、吹き飛ばされてしまう。イシェは素早く動き、怪物の攻撃をかわしながらラーンの隙を突くチャンスを狙っていた。テルヘルは冷静さを失わずに、怪物の弱点を探りながら魔法の呪文を唱え始めた。
その時、洞窟の奥から光が差し込み、三人は一瞬息をのんだ。光の中央には、美しい女性の姿があった。彼女は白い衣をまとい、穏やかな笑顔で三人を見つめていた。
「汝らは、この遺跡に導かれた者か?」女性は柔らかな声で語りかけた。
ラーンとイシェは驚きのあまり言葉を失い、テルヘルも警戒しながらその存在を観察していた。
女性はゆっくりと近づき、怪物の目をじっと見つめた。「汝の怒りを鎮めよ。この遺跡を守るのは私だ」と女性が言うと、怪物の体は光に包まれ、みるみるうちに消えていった。
三人は目の前で起こったことを理解するのに時間がかかった。女性は自分たちの前に現れた理由も、なぜ怪物を制御できたのか、何も説明しなかった。だが、彼女の優しい眼差しと穏やかな声から、何か大きな力が彼女の中に宿っていることを感じ取ることができた。
女性は静かに微笑みを浮かべ、「汝らはまだ見ぬ運命に導かれているのだ」と言い残し、光と共に姿を消した。洞窟に再び闇が訪れた後も、三人の心には、女性との邂逅が鮮やかに焼き付いていた。