ラーンの粗雑な斧の一撃が埃を巻き上げて、遺跡の奥深くへと響き渡った。イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れかけた石柱の隙間から覗き込んだ。「本当にここなのか? いつも大口叩く割に、今回は確証がないんじゃないか?」
ラーンは肩をすくめた。「大丈夫だ。あの老人が言ってた場所だろ? きっと何かあるはずだ。」
イシェはため息をついた。「あの老人… ああ、あの遺言の内容のことか。本当に信じていいのかね…」
彼らは数日前、ビレーの酒場で一風変わった老人に出会った。彼はかつて遺跡探検家だったと名乗り、隠された宝の場所を伝える遺言を残したという。その場所は、今まさに彼らが探っている遺跡だったのだ。
テルヘルは鋭い目で周囲を観察しながら言った。「遺言の内容は確かだ。この遺跡には何かあるはずだ。だが…」彼女は視線をラーンに向けた。「今回は慎重に進もう。あの老人の目的が何なのか、まだわからない。」
ラーンの表情が曇った。「何だと? 俺たちを騙しているってのか?」
テルヘルは否定するでも肯定するでもなく、ただ静かに言った。「用心するに越したことはない。」
イシェはラーンの肩に手を置いた。「落ち着いて。テルヘルさんの言う通りだ。あの老人が何を企んでいるか、まだわからない。油断は禁物だ。」
ラーンは渋々頷いた。そして三人は、遺跡の奥深くへと進んでいった。彼らの足音だけが、静寂を破る唯一の音だった。