ラーンの斧が岩壁を叩き、石塵が舞い上がった。
「ここか?」イシェが薄暗い遺跡内部を見回した。「なんか…不気味だなぁ」
「そんなこと言ってないで、早く宝探さないと日が暮れるぞ」
ラーンはいつも通りの軽い口調だったが、イシェは彼の視線に何かを感じ取った。最近、ラーンの目はどこか空虚に見えた。
「テルヘルはどうするんだ?」
「あの女は、またあの本でも読んでるんじゃないか」
テルヘルは遺跡の奥で古い書物を読み込んでいた。彼女はヴォルダンとの復讐を果たすために遺跡を巡り、その過程で得た知識は膨大だった。だが、イシェには彼女の目的が理解できなかった。単なる復讐心だけでは、あの執念深い fanaticism を説明できない。
「おい、お前ら!」
テルヘルが声を張り上げた。「ここだ!この壁に何か書かれてるぞ!」
壁には複雑な模様が刻まれていた。イシェは本能的に危険を感じた。
「これは…何だ?」
「古代の言語だ」テルヘルは興奮気味に言った。「これは…遺伝子操作に関する記述だ!古代人が自分たちの能力を後世へと継承させるための方法を記している!」
ラーンが眉間に皺を寄せた。「そんなもの、本当に存在するのか?」
「あるんだ。そして、その鍵は…ここにある」テルヘルは壁の模様を指さした。「この遺跡には、古代人が残した遺伝子サンプルが存在するはずだ!」
イシェは恐怖を感じた。遺伝子操作とは何か、その危険性については聞いたことがあった。もしそれが真実であれば、この遺跡は単なる宝探し場所ではなく、人類の未来を左右する場所なのかもしれない。
「よし、やろう」ラーンが言った。「あの女に騙されてたとしても、俺たちには何も失うものはない」
イシェはラーンの決意に頷いた。彼らにはもう後戻りできない。遺跡の奥深くへと進むにつれて、イシェは自分たちの運命に背筋が凍るような予感を感じた。