「よし、今日はここだな!」
ラーンが、地図を広げながら言った。イシェは眉間にしわを寄せた。
「また大穴だと?ラーン、あの遺跡は危険だって聞いたことがあるよ。罠だらけだってさ」
「大丈夫、大丈夫!俺にはイシェがいるだろ。それに、テルヘルさんがいい報酬くれるって言うなら、行くしかないだろう!」
ラーンの笑顔に、イシェはため息をついた。テルヘルは、ヴォルダンへの復讐を誓う謎の女性だ。彼女は、ラーンとイシェに遺跡探索を依頼し、高額の日当と遺物の独占を持ちかけてきた。
「あのテルヘルさん、一体何のために遺跡を探しているんだろうな…」
イシェが呟くと、ラーンは肩をすくめた。
「知らんよ。でも、俺たちが手に入れた財宝でビレーを盛り上げてやるんだ!そうすれば、あの執政官選も…」
ラーンの言葉は途切れた。彼は、選挙について話すのを避けるようになっていた。最近、街では自主独立派と恭順派の対立が激化し、選挙を巡る争いが加熱していたのだ。
「さあ、行くぞイシェ!」
ラーンが立ち上がり、遺跡へと足を踏み入れた。イシェは、彼の後ろを歩きながら、胸の中でため息をついた。
遺跡の中は、暗く湿っていた。壁には、古びた文様が刻まれていて、不気味な雰囲気を漂わせていた。
「ここだな」
テルヘルが、ある部屋の前に立ち止まった。部屋の真ん中には、石棺が置かれていた。
「この石棺を開ければ、ヴォルダンの秘密が明らかになるはずだ」
テルヘルは、剣を抜いて石棺に近づこうとした。その時、床から黒い煙が立ち上り、部屋を満たした。
「うわっ!」
ラーンが声を上げた。煙の中から、不気味な影が現れた。それは、骸骨と化していた戦士だった。
「敵だ!」
ラーンが剣を抜き、骸骨戦士に襲いかかった。イシェも、弓矢で応戦した。テルヘルは、石棺に近づき続けるため、後方から援護射撃をした。激しい戦いが続く中、イシェは、テルヘルの様子に違和感を感じた。
「おかしいな…テルヘルさん、あの石棺をそんなに欲しがっている理由がわからない…」
イシェは、自分の直感を信じ、テルヘルの行動を疑い始めた。