「よし、今日はあの崩れた塔に行ってみるか?」ラーンが剣を肩越しに担ぎながら、イシェに声をかけた。イシェは地図を広げながら、「あの塔か… 確かに未踏破のエリアが多いけど、ヴォルダン軍の哨戒も頻繁だって噂だよ」と心配そうに言った。
「気にすんなって!俺たちに敵はないぜ!」ラーンの豪快な笑い声がビレーの街並みへとこだました。イシェはため息をつきながら、テルヘルに目を向けた。「どうする、テルヘル?」
テルヘルの鋭い視線は遠くの山脈に向けていた。「行く価値はある。あの塔には古いヴォルダン王家の記録が眠っている可能性がある」彼女の口調は冷酷で、目的意識が強く滲み出ていた。ラーンとイシェの反応など気にも留めなかった。
崩れた塔へと続く道は険しく、危険な獣たちも潜んでいた。ラーンの力強い剣技とイシェの機転が危機を何度も回避させた。そしてついに、朽ち果てた塔にたどり着いた。内部は暗く静寂で、埃と影だけが支配していた。
「ここだ… この塔の奥には、ヴォルダン王家の秘宝が眠っているはずだ」テルヘルが地図を広げながら言った。イシェは不安を感じながらも、ラーンの後ろをついて塔の中を進んでいった。
すると、突然、不気味な音が響き渡った。それは獣の唸り声ではなく、金属同士がぶつかる鋭い音だった。彼らは警戒しながら進み続けると、広間の奥で衝撃的な光景に遭遇した。
ヴォルダン軍の兵士たちが、何かの遺物を取り囲んでいたのだ。その中心には、輝く金色の王冠が置かれていた。ラーンとイシェは息を呑んだ。テルヘルは冷酷な笑みを浮かべた。「見つけた…」彼女は呟いた。
その時、ヴォルダン軍の兵士の一人が振り返り、ラーンの存在に気づいた。彼の顔には驚きと殺意が渦巻いていた。