ラーンの斧が石壁にぶつかり、石塵が舞った。
「やっぱりダメだ。ここには何もない」イシェがため息をついた。「もう日が暮れるぞ。引き返そう」
ラーンは悔しそうに顔をしかめた。「もう少し探せば何かあるはずだ。あの古い地図には確かにここに遺跡があるって書いてあったんだ」
テルヘルが静かに言った。「地図は嘘だったのかもしれません。この遺跡は既に誰かが探して、空っぽにしてしまった可能性もあります」
イシェは「そうかもね」と呟きながら、後ろを振り返った。辺境の街ビレーへと続く山道は夕日に染まり始めていた。
ラーンは諦めきれない様子で、壁を叩きながら言った。「いや、まだ何かあるはずだ!あの地図は…」
その時だった。彼の指が何か硬いものに当たった。石壁に埋め込まれた小さな金属のプレートだった。
「これって…?」ラーンの声が震えた。イシェもテルヘルも息を呑んで近づいた。プレートには複雑な模様が刻まれており、その中心には宝石が埋め込まれていた。
「これは…!」テルヘルは目を輝かせた。「古代ヴォルダン文明の紋章だ!この遺跡はヴォルダンのものだったのか…」
イシェは驚いて言った。「ヴォルダン?でも、ここはエンノル連合の領地のはずなのに…」
ラーンは興奮気味に言った。「もしかしたら、これはヴォルダンとエンノルの歴史に隠された秘密を解く鍵になるかもしれない!この遺跡にはまだ何かがあるはずだ!」
テルヘルは深く頷きながら言った。「そうだな。この遺跡が私たちに何を語るのか、じっくりと探ってみよう」
夕日に染まる山道を行く3人の後ろ姿。彼らの足取りは軽やかで、まるで未来へと続く道を歩むかのように自信に満ち溢れていた。しかし、彼らの背後には、深い闇が広がっていた。それは、古代ヴォルダン文明の秘密を暴き出すことで、彼らを待ち受けるであろう嵐の予兆だった。
そして、その嵐は、遥か昔に遡る壮大な歴史と深く関わっていることを、彼らはまだ知る由もなかった。