ラーンがいつものように、錆びた剣を磨きながらイシェの機嫌を伺っていた。「今日の遺跡はどんな噂だ？」と尋ねると、イシェはため息交じりに答えた。「また大穴の話らしい。でも今回は、ヴォルダン軍が以前から目を付けているらしいぞ」ラーンの顔色が一瞬曇る。「そんな危険な場所に行くのはやめようぜ」とイシェは言ったが、ラーンは首を振った。「あの噂の宝庫が見つかったら、俺たちの人生が変わるんだ。リスクを冒す価値はあるさ」
テルヘルは二人のやり取りを冷ややかな目で見ていた。彼女にとって、遺跡はヴォルダンへの復讐を果たすための手段の一つに過ぎなかった。ラーンの熱意は理解できないし、イシェの慎重さは邪魔なだけだと思った。だが、二人を利用する必要がある。彼女は静かに言った。「今回は危険だ。準備をしっかりしてから行く必要がある」
三人はビレーを出発した。険しい山道を進み、やがて遺跡へと続く洞窟にたどり着いた。洞窟の入り口にはヴォルダン軍の足取りが残っていた。ラーンは興奮気味に剣を抜こうとしたが、イシェが制止した。「ここは慎重に進もう」と彼は言った。「テルヘル、何か情報はないのか？」
テルヘルは小さく頷いた。「遺跡の奥深くには、ヴォルダン軍が探しているものがあるようだ。強力な魔力が込められた遺物らしい」彼女は少しの間沈黙し、こう続けた。「もし手に入れられれば、ヴォルダンに大きな打撃を与えられるだろう」ラーンの目は輝き始めた。「よし、行くぞ！」と彼は叫んだ。イシェはため息をついたが、テルヘルの指示に従い、遺跡の奥へと進んでいった。
洞窟の奥深くには、巨大な石の扉があった。扉には複雑な紋様が刻まれており、魔力がみなぎっていた。ラーンは扉に手を伸ばそうとしたが、イシェが制止した。「待て！」と彼は言った。「何か罠があるかもしれない」テルヘルは冷静に扉を調べ始めた。すると、扉の近くに小さな石板を見つけ出した。石板にはヴォルダン軍の紋章が刻まれており、警告が書かれていた。「この扉を開ける者は、ヴォルダンの怒りを買うことになるだろう」
ラーンは意を決したように言った。「俺たちはもう後戻りできない。扉を開けろ、イシェ！」イシェはためらいながらも、ラーンの指示に従い、扉の紋様をなぞった。すると、扉がゆっくりと開いていった。扉の向こうには、眩しい光が輝いていた。
三人は息をのんだ。遺跡の奥には、想像を絶する光景が広がっていた。そこには、無数の宝物が積み上げられており、中心には巨大な水晶球が鎮座していた。水晶球からは、圧倒的な魔力が放たれていた。ラーンの目は金銭欲で輝き、イシェは驚きと恐怖に言葉を失った。テルヘルだけが静かに水晶球をじっと見つめていた。彼女の心には、復讐への渇望と、水晶球の持つ謎が渦巻いていた。