ラーンの粗雑な斧の一撃が、石の扉を粉砕した。埃が舞い上がり、イシェは咳き込んで顔をしかめた。
「また無駄な力の使い方だ」
イシェは眉間に皺を寄せながら、壊れた扉の隙間を覗き込んだ。
「ここには何もないぞ」
「いや、待てよ」
ラーンは扉の残骸を蹴飛ばし、奥へと踏み入った。「何か感じるんだ...」
薄暗い通路の先に広がっていたのは、朽ち果てた祭壇だった。中央には、ひび割れた石の球体が鎮座していた。イシェは近づき、慎重に球体を指で撫でた。冷たい感触が伝わってきた。
「何か...反応がある」
イシェの視線は、球体の上部にある小さな凹みに向いた。そこに、まるで鍵を差し込むようにぴったりと収まる石片があった。
「これは...?」
ラーンの顔色が変わった。「もしかして、大穴の鍵じゃないか!?」
彼は興奮気味に叫んだが、イシェは冷静さを保った。
「落ち着きなさい、ラーン。まだ何も分かっていない」
彼女はポケットから小さな包みを取り出し、石片を慎重に取り出した。
「これは...テルヘルがくれたものだ。遺跡の調査記録にある、この球体にまつわる伝説について書かれていた」
イシェは石片を球体の凹みに差し込んだ。すると、球体はゆっくりと回転し始めた。石室全体に青い光が溢れ、壁には複雑な模様が浮かび上がった。
「これは...!」
ラーンの目は驚きに輝いていた。イシェも息をのんだ。
「達成だ…」
テルヘルの声が、遠くから聞こえた気がした。