「よし、今日はあの崩れかけた塔だ！」ラーンが目を輝かせた。イシェはため息をついた。「またそんな危険な場所？本当に大穴があるのか疑わしいよ」。
「大丈夫だって！ほら、テルヘルも言ってたじゃないか。あの塔には古代の魔法道具が眠ってるとさ」ラーンの言葉に、テルヘルが頷いた。「情報によると、それはヴォルダン軍の魔導師にも covetous されていたらしい。手に入れる価値は十分にある」。
イシェは渋々ながらも、準備を始めた。ラーンとテルヘルは遺跡探索に夢中だが、イシェにとって大切なのは「大穴」よりも現実的な収入だった。
ビレーでの生活は決して楽ではなく、特に最近は物価も上がっている。イシェはいつも、もっと安定した仕事はないかと考えていた。
遺跡へ向かう道中、ラーンが突然立ち止まった。「おい、いい匂いがするぞ！」彼の目は道端に咲く花に釘付けになった。イシェは呆れた。「また道草か？早く行かないと日が暮れるぞ」。
「ちょっとだけだよ！珍しい花だぞ、見てみろよ」ラーンの言葉に、テルヘルも興味を示した。「確かに、珍しい品種だ。この地域では見かけたことがない」。三人はしばらく花を眺めていた。イシェは仕方なく待った。
その後、遺跡の入り口にたどり着いた時、すでに日が傾き始めていた。イシェは不安を感じ始めた。危険な遺跡に夜中まで滞在するのは避けたい。
「早く探して、帰ろう」イシェが言うと、ラーンは少しの間だけ渋い顔をした。しかし、テルヘルの制止に従い、塔の中へと足を踏み入れた。
しかし、塔の中は予想以上に暗く、湿気を帯びた冷たい風が吹き荒れていた。イシェの不安は増すばかりだった。
「何かあったのか？」テルヘルが振り返り、イシェの様子を伺った。「いいえ、何も…」イシェは無理に明るい声で答えた。しかし、心の中では、この遺跡探索が終わったら、もうラーンと組まないことを決意した。