ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝の静けさに響き渡った。「よし、イシェ!今日は必ず何か見つかるぞ!」
イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、ラーンの背中に手を当ててバランスを確かめた。「落ち着いて、ラーン。計画的に進めないと危険だぞ。あの遺跡は特に罠が多いと聞いたはずだ」
「大丈夫大丈夫!俺が先頭を切って開拓するから、イシェは後方で警戒してくれればいいんだ!」ラーンの言葉は自信に満ち溢れていた。
テルヘルは二人を見つめながら、薄く微笑んだ。「計画性のない行動は危険だが、時に予想外の発見をもたらすこともある。今回は彼の直感に賭けてみよう」
遺跡の入り口には朽ちた石碑が立っていた。そこに刻まれた文字はほとんど風化しており、イシェはわずかに残る文字を指でなぞりながら読み解こうとした。「ここはかつて道場だったようだ…」「道場?」ラーンの顔色が変わった。「そんな場所に宝が眠ってるわけがないだろう」
テルヘルは興味深そうに石碑を見つめた。「道場とは武術を学ぶ場所だ。そこに宝物が隠されている可能性は低い。だが、何か重要な情報が得られるかもしれない」
遺跡の奥深くまで進むにつれて、壁には剣や槍の痕跡が残っていた。かつて激しい戦いが繰り広げられた証だった。ラーンは興奮した様子で石碑を指差した。「見てみろ!イシェ、ここには道場の教えが刻まれているぞ!」
イシェは石碑に刻まれた文字を丁寧に読み解いた。「…心構え…技の精錬…真の強さとは…」イシェは深く考え込んだ後、ラーンに言った。「この道場では、単なる武力だけでなく、精神的な鍛錬も重視されていたようだ。もしかしたら、ここで何か重要な発見ができるかもしれない」
テルヘルは沈黙したまま遺跡の奥へと進んでいった。彼女の目は鋭く周囲を警戒していた。遺跡の奥深くには、かつて道場であったと思われる広間があった。そこには、朽ち果てた武器や防具が散乱し、壁には戦いの痕跡が残っていた。
ラーンの目は輝いていた。「これはすごいぞ!ここに何か大物が眠っているはずだ!」彼は興奮を抑えきれず、遺跡の中をくまなく探した。イシェは慎重に周囲を調べながら、ラーンを注意深く見守った。テルヘルは、広間の奥にある一際大きな石の扉に目を留めた。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで古代の魔法文字のようだった。
「これは…?」テルヘルの視線は石の扉に釘付けになった。彼女はゆっくりと扉に触れた。その瞬間、石の扉は突然光り輝き、激しい音を立てて開いた。扉の向こうには、輝く金色の光が溢れ出していた。
ラーンとイシェは息を呑んだ。「これは…!」ラーンの目は驚きに満ちていた。イシェは興奮を抑えきれず、テルヘルの腕を掴んだ。「何か見つかったのですか?」
テルヘルは静かに頷き、扉の向こうへと歩みを進めた。そこには、かつて道場であった場所が、今や壮大な宝物庫へと変貌していた。壁一面に宝石が埋め込まれ、中央には巨大な金貨の山が積み上げられていた。
ラーンの目は輝き、イシェは驚愕した表情で立ち尽くす。テルヘルは微笑みを浮かべながら、ゆっくりと宝の山へと近づいていった。この道場には、武術を学ぶだけでなく、真の強さとは何かを追求していたのかもしれない。そして、その強さは、物質的な富をもたらすものであったようだ。