日差しが容赦なく照りつけるビレーの広場。ラーンはイシェに酒を勧めた。「おい、イシェ、今日はいい仕事したよな！テルヘルのお陰で報酬も倍だぞ！」
イシェは苦笑しながら杯を傾けた。「確かに報酬は嬉しいけど、あの遺跡…あの空間は何か嫌だったよ。あの石碑の刻まれた文字、まるで警告みたいに見えたんだ。」
「ああ、あれか。古代人の呪文とか言ってたな。気にしすぎだよ。」ラーンは豪快に笑い飛ばした。
テルヘルがテーブルに近づき、鋭い視線で二人を見据えた。「今日の成果は価値あるものだった。特にあの石板。ヴォルダンに渡せば…」彼女は言葉を濁した。
「ヴォルダンか…やっぱりお前、ヴォルダンに恨みでもあるのか？」ラーンの問いかけに、テルヘルは深く息を吸い込んだ。「いつか全てを奪った者たちに復讐をする。それが私の生きる意味だ。」
イシェは不安な表情でラーンを見た。「あの石板…本当にいいものなのか？何か変だな…」
ラーンの視線はテルヘルの鋭い眼差しに引き寄せられた。「お前、本当にヴォルダンを倒せると思っているのか？」
「必ずそうする。」テルヘルは力強く答えた。その言葉には揺るぎない決意が込められていた。
翌日、イシェはビレーの図書館で古文書を読み漁っていた。あの遺跡に関する記述を見つけ、石板の意味を解き明かそうとしていたのだ。すると、ある一文に目を奪われた。「古代文明の遺物に触れる者は、その代償を支払わなければならない…」
イシェは冷や汗が流れるのを感じた。あの石板は単なる遺物ではない。何か恐ろしい力が秘められているのかもしれない。そして、ラーンとテルヘルはそれを利用しようとしている…
イシェは不安を胸に秘め、ビレーを出発する二人の背中を見送った。彼らの行動は過失なのか、それとも運命なのか。イシェは深くため息をついた。