ラーンが巨大な石の扉をこじ開ける音が、埃っぽい空間にこだました。イシェは背筋を伸ばし、かすれた光が差し込む隙間から遺跡の奥へと目を凝らした。
「よし、ここだ!」
ラーンの声は興奮気味だったが、イシェにはどこか虚しさを感じた。いつもと同じように、ラーンは宝の山を夢見ていたのだ。
「本当にここにあるのか、ラーン?」
イシェが尋ねると、ラーンはにやりと笑った。
「もちろん、イシェ!あの古い書物には間違いなかったはずだ。ここに、古代の王が眠る墓があるってさ。そして、その王の墓には…」
ラーンの言葉は途絶えた。石の扉を押し開けた先に広がる光景は、彼らが予想していたものとは程遠いものだった。そこには、金や宝石で埋め尽くされた王の墓ではなく、巨大な機械が静かに佇んでいた。複雑に組み合わされた歯車とギヤは、まるで生きているかのように脈打っているように見えた。
「こ、これは…」
イシェが言葉を失う。ラーンも呆然とした表情を浮かべていた。
その時、機械の奥から低い音が響き渡った。ゆっくりと、機械の目は開き、赤い光を放ち始めた。
「何だ…あの音は?」
ラーンの声が震える。イシェは恐怖を感じながらも、冷静さを保とうとした。
「ラーン、逃げよう!」
イシェが叫んだ瞬間、機械から無数の光弾が発射された。ラーンは反射的にイシェを庇い、光弾を受け止めた。
「ラーン!」
イシェは絶叫した。ラーンの姿は、光弾に飲み込まれ消えていった。
その時、テルヘルが駆けつけてきた。
「何があったんだ?」
イシェの言葉に、テルヘルは冷静に状況を判断した。そして、機械に向かって剣を構えた。
「この機械…ヴォルダンと関係があるのかもしれない…」
テルヘルは呟きながら、機械へと向かっていった。イシェは立ち尽くすだけであった。ラーンの姿を思い出し、涙が溢れてきた。
過大に膨らんだ希望は、残酷な現実によって打ち砕かれた。そして、イシェの胸には、復讐と絶望が渦巻いていた。