ラーンの大剣が遺跡の奥深くにある石壁を叩き割り、埃が舞い上がる中、イシェは咳き込みながら鼻をつまんだ。「また無駄なことを…」と呟く彼女の言葉を遮るように、石壁の裏側から何かが光り始めた。
「おおっ！」ラーンは目を輝かせ、興奮気味に石ころを片付け始めた。それは小さな金色の箱だった。イシェはため息をつきながら、箱を開けるラーンの様子を見つめた。
「よし！これでまた一週間お酒が飲めるな！」ラーンは満面の笑みで箱の中身を確かめようとしたその時、イシェの顔色が変わった。「ラーン、待て！」彼女の言葉は届かなかった。ラーンはすでに箱を開けていた。
箱の中には宝石ではなく、奇妙に輝く黒い石が一つだけ入っていた。その瞬間、遺跡の奥底から不気味な音が響き渡り、地面が激しく揺れ始めた。ラーンの顔色は青ざめ、「おい、これは一体…？」と彼は呟きながら、石を慌てて箱に戻そうとした。しかし時すでに遅かった。黒い石に触れた瞬間に、ラーンの体から黒い煙のようなものが立ち上り、彼の意識は朦朧としていった。
イシェはラーンを支えようと手を伸ばしたが、その瞬間、黒い煙が彼女の体を包み込んだ。激しい痛みと苦しみを感じながら、イシェは意識を失った。
テルヘルは遺跡の外で待っていた。彼女は不吉な予感がしたまま、3人の帰りを待っていた。だが、戻ってきたのはラーンとイシェの姿ではなく、黒い煙だけが立ち上る遺跡の入り口だった。テルヘルは眉をひそめ、小さく呟いた。「過ち…またしても…」