ラーンの大 hineinがビレーの街並みを吹き抜けるように響き渡った。イシェは眉間に皺を寄せて彼を見つめた。「また遺跡探しの話か? 昨日もそうだっただろう?」
「いや、今回は違うんだ!」ラーンは興奮気味に言った。「テルヘルが新しい依頼を持ってきてくれたんだって! 大きな遺跡らしいぞ! きっと大穴が見つかる!」
イシェはため息をついた。ラーンの「大穴」への執着は尽きない。だが、今回の依頼には何か様子が違うと感じていた。テルヘルはいつもより真剣な表情で、声も低く抑えていたのだ。
「一体何が違うんだ?」イシェが尋ねると、テルヘルは沈黙して街の外へと歩き出した。ラーンとイシェは互いの顔を見合わせた後、テルヘルについていくことにした。
廃墟と化した建物群を抜け、彼らは広がる平原にたどり着いた。遠くにはヴォルダンとの国境線が見えた。そこは、かつて激しい戦いが繰り広げられた場所だ。
「ここが今回の遺跡だ」テルヘルは静かに言った。「ヴォルダン軍が何らかの目的で調査していたらしい。危険な場所だが、大きな報酬が約束されている」
イシェは不安を感じた。テルヘルの言葉から、この遺跡には何か秘密が隠されているように感じたのだ。ラーンはいつものように無邪気に、「よし、行ってみよう!」と叫んだが、イシェは彼の背中に影を感じていた。
彼らは遺跡へ向かった。遺跡の入り口は崩れ落ちており、内部は暗闇に包まれている。テルヘルは先頭に立ち、慎重に足を踏み入れた。ラーンとイシェは互いに手を握り合い、緊張した面持ちで続く。
遺跡内部は広大で複雑な構造をしていた。壁には古びた彫刻が刻まれており、床には崩れ落ちた石像が転がっている。彼らは懐中電灯の光を頼りに進んだ。
突然、地響きが起こった。遠くから聞こえるような轟音だ。ラーンは驚いて振り返り、イシェは彼の腕にしっかりとつかまった。
「何だ? あの音は…?」イシェの声は震えていた。テルヘルは冷静に言った。「ヴォルダン軍が遺跡を調査している可能性が高い。我々はすぐにこの場所から離れるべきだ」
彼らは慌てて遺跡から脱出しようと試みた。しかし、出口は崩れ落ちており、脱出路は絶たれていた。
その時、ラーンが叫んだ。「イシェ! あそこ!」
彼の指さす方向には、小さな隙間が開いていた。イシェは息を呑んで、その隙間を見つめた。そこは、遺跡の奥深くに続く通路だった。
「行くしかない!」
ラーンの言葉に促され、彼らは狭い通路に足を踏み入れた。通路は暗く狭く、彼らの体は壁と壁の間を擦り抜けながら進む。彼らの動きはゆっくりで慎重になり、息遣いだけが響いていた。
この狭い通路がどこにつながっているのか。そして、彼らを待っているものは何なのか。イシェは恐怖と期待を胸に抱きしめながら、続く暗闇へと足を踏み入れていった。