ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼を睨みつけた。「また遺跡探しの話か？ そんな大穴なんて、ただの作り話じゃないのか？」
「いやいや、イシェ、お前も知ってるだろ？ 昔、この地で巨大な宝石が見つかったって話！ あの伝説は本当だ！」ラーンは目を輝かせ、剣を肩に担いだ。「あの宝石が眠る遺跡を見つけるんだ！俺たちならできる！」
イシェはため息をついた。ラーンの熱意にはいつも圧倒されるが、その楽観性は時に危険な落とし穴になることも知っていた。「でも、あの遺跡は危険だって聞いたぞ。ヴォルダン軍も興味を示してるらしいし…」
「そんなの気にすんな！俺たちにテルヘルさんがいるんだろ？」 ラーンは自信満々に言った。
テルヘルは鋭い眼差しで二人を見つめていた。「私はあくまで支援者だ。危険な探索には、必ずしも同行しない。」彼女の言葉に重圧を感じながらも、イシェは小さく頷いた。
遺跡の入り口は崩れかけており、内部は薄暗い影に覆われていた。ラーンは軽快に石畳を駆け上がり、イシェは後を追うように慎重に足を踏み入れた。テルヘルは彼らから少し遅れて、静かに遺跡の中へ入った。
奥深くまで進んだ時、彼らは壁画を発見した。そこには、古代の人々が奇妙な儀式を行う様子が描かれていた。
「これは…？」イシェは息を呑んだ。壁画の精緻さに圧倒された。
ラーンの表情が硬くなった。「何か変だ…この絵…」
テルヘルは壁画をじっと見つめていた。「これは…ヴォルダンが探しているものと同じだ。」彼女は呟いた。その声には、予感に満ちた不穏な響きがあった。
その時、地面が激しく震えた。壁から石が崩れ落ち、彼らの前に新たな通路が開かれた。ラーンの好奇心はさらに増した。「これは！何かがあるぞ！」彼は興奮気味に叫んだ。イシェは不安を感じながらも、ラーンとテルヘルに従い、新たな通路へと進んでいった。
しかし、その先には予想外の光景が広がっていた。そこは広大な地下空間で、中央には巨大な祭壇がそびえ立っていた。祭壇の上には、脈打つような光を放つ球体が置かれていた。
「これは…」テルヘルは言葉を失った。イシェもラーンも、その光景に圧倒された。球体からは、不思議な力を感じることができる。
突然、空気が重くなった。背後から冷たい声が響き渡った。「ようやく見つけた…」
振り返ると、そこにはヴォルダン軍の兵士たちが立っていた。彼らは厳つな表情で、ラーンたちを囲い込んだ。
「お前たちは…！」ラーンの剣が震えた。イシェは恐怖を感じながらも、冷静さを保とうと努めた。テルヘルは静かに剣を抜き、敵を睨みつけた。
「これはヴォルダンに渡すべきものだ。」兵士の一人が言った。「お前たちは邪魔だ。消せ！」
ラーンの怒りは爆発した。彼は敵に向かって突進し、激しい剣戟が始まった。イシェもテルヘルも戦い始めたが、ヴォルダン軍の兵士たちは強靭で、次第に押される形になった。
その時、球体が突然光り輝き始めた。その光は、ラーンの体を包み込み、彼の身体を変化させた。彼は力を増し、敵を圧倒するようになった。
「なんだこれは…？」イシェは驚きを隠せない。ラーンはまるで別の存在になったようだった。彼の瞳には、今まで見たことのない狂気に満ちた光が宿っていた。
テルヘルは冷静さを保ちながら、状況を分析した。「これは…逸脱だ。この球体が引き出した力…」彼女はラーンの変化に恐怖を感じながらも、彼を止めようと決意した。