ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝の静けさを突き破った。
「よし、今日はきっと大穴が見つかるぞ！」
イシェはため息をつきながら、ラーンが持ってきた粗末な地図を広げた。
「またあの洞窟か？ ラーン、あの場所は何度も探索しただろう。何もないって。」
「いやいや、今回は違う！ きっと何かあるはずだ！」
ラーンの自信に満ちた目は、イシェを少しだけ動揺させた。彼の楽観的な態度にはいつもイラついていたが、同時に引っ張られるようなものを感じていたのも事実だった。
そこにテルヘルが合流した。彼女はいつも通り黒いローブを身に纏い、鋭い眼光で二人を見据えていた。
「準備はいいか？ 今日の目標は、洞窟の奥にあるとされる古代の祭壇だ。噂ではそこには強力な遺物があるらしい。」
ラーンの顔色が一変した。
「強力な遺物か…！」
イシェはテルヘルの言葉に少し警戒感を覚えた。彼女はいつも目的のためなら手段を選ばないタイプだった。
洞窟の入り口は、うっすらと緑苔で覆われ、不気味な静けさの中に佇んでいた。ラーンは剣を抜き、先陣を切ると、イシェとテルヘルが続いた。
洞窟内は暗く湿っていた。足元には滑りやすい石が転がっており、気を抜くと転倒しそうだった。ラーンの前を進む姿は、まるで獣のように力強く、イシェは彼の後ろを静かに追いかけるように進んでいった。テルヘルは二人より少し遅れて、常に周囲を警戒しながら歩いていた。
しばらく歩くと、洞窟の奥深くで、何かが光っているのが見えた。
「あれだ！」
ラーンの声が響き渡り、三人ともその光に駆け寄った。
そこには、巨大な祭壇が鎮座していた。祭壇の上には、宝石で飾られた金の宝箱が置かれていた。
「やった！ 大穴だ！」
ラーンは興奮を抑えきれず、宝箱に手を伸ばそうとしたその時、地面が激しく揺れた。
洞窟の奥から、轟音と共に巨大な影がゆっくりと姿を現した。それは、古代の遺跡を守る守護神と呼ばれる怪物だった。
「逃げろ！」
テルヘルの叫び声と共に、三人は命からがら逃げ出した。ラーンの豪快な笑い声は、恐怖に変わる瞬間も一瞬で消し去られた。洞窟の奥には、輝く宝箱ではなく、彼らの前に立ちふさがる巨大な影と、その影が彼らを飲み込んでいくように迫ってくる暗闇が広がっていた。
彼らは今、まさに「進撃」する必要に迫られていた。