ビレーの夕暮れはいつもより早く訪れた。空には燃えるような赤とオレンジが渦巻き、ラーンの背筋に戦慄を走らせた。遺跡の入り口でイシェの眉間に刻まれた皺が増えていくのが見える。
「やっぱり行くべきじゃないのか？」
イシェの言葉は小さく、しかし揺るぎない意志を帯びていた。ラーンは胸部に手を当て、荒い呼吸を落ち着かせようとした。テルヘルが提示した報酬は魅力的だった。だが、遺跡からの報告が途絶えたこと、そしてあの不吉な赤い光。
「あの光…あれは一体何だったんだ？」
イシェの視線はラーンの顔から離れず、彼の瞳は揺らぎ続ける炎のように燃えていた。「大穴」を掘り当てるという夢を叶えるチャンスなのかもしれない。だが、その夢が彼らを奈落に突き落とす可能性もある。
テルヘルは静かに彼らを二人とも見つめ、「決断する時間よ。」と告げた。その声は氷のように冷たかった。ラーンの視線はテルヘルの鋭い眼光からそらされず、イシェの顔を見つめた。イシェの表情は決意に満ち溢れていた。
ラーンは深く息を吸い込み、剣を握りしめると言った。「行くぞ。」