ラーンが剣を抜き放つと、埃っぽい空気が渦巻いた。崩れかけた遺跡の奥深くから、不気味な咆哮が響き渡る。イシェは眉間に皺を寄せながら、薄暗い通路を照らすランプの光を調整した。「まさか、またゴーレムか?」
「ああ、でも今回は大物みたいだな!」ラーンは興奮気味に言った。「あの目玉の大きさを見てみろよ!宝石より価値あるかもな!」彼の目は金貨でいっぱいになった未来を描いていた。
イシェはため息をつきながら、テルヘルの方を見た。「あのゴーレムを倒せば、報酬が倍増だって言ってたわよね?」
テルヘルは冷静に頷いた。「その通りだ。だが、油断するな。ヴォルダン軍が遺跡調査をしているという噂を聞いた。彼らもゴーレムの心臓を狙っている可能性がある。」
彼女の言葉にラーンの笑顔は消えた。ヴォルダンの兵士たちは冷酷で残忍だった。彼らとの遭遇は避けたいものだった。イシェはラーンの肩に手を置いて、小さく頷いた。「気をつけようね。」
ゴーレムの咆哮がより激しくなり、通路を揺るがした。ラーンは深呼吸をして剣を構え直した。「よし、行くぞ!」
三人は息を合わせ、ゴーレムへと向かって突撃した。イシェは素早く動き回って攻撃を避け、テルヘルは魔法でゴーレムの動きを封じ込めた。ラーンの剣はゴーレムの硬い皮膚を切り裂き、血のような液体があふれ出した。激しい戦いの末、ついにゴーレムは倒れた。
息が切らしながら、三人は倒れたゴーレムの周囲を見回した。「よし、心臓はどこだ?」ラーンが興奮気味に言った。
「この大きさなら、かなりの金額になるわね。」テルヘルが満足げに呟いた。イシェは疲れ果てた様子で床に腰を下ろした。
「今日はもう終わりにしよう。ゴーレムの心臓は後で処理すればいい。」
ラーンの顔色が曇った。「でも、あのゴーレムの大穴を掘り当てたら…」
イシェは彼を見つめ、「大穴はいつだってある。今日の報酬で、少しは贅沢しようよ。」と言った。
三人は遺跡から戻り、ビレーの宿屋へと向かった。夜空には満月が輝き、街は賑わいを見せていた。ラーンは歩きながら、イシェに言った。「おい、イシェ。今日はゴーレムを倒したご褒美に、一杯奢るぞ!」
イシェは少しだけ微笑んだ。「ありがとう、ラーン。でも、あまり贅沢しすぎちゃダメよ。」