「よし、準備はいいか?」ラーンの豪快な声とイシェの小さく頷く姿が、薄暗い tavern の片隅で重なった。テーブルの上には粗雑に描かれた地図が広げられ、テルヘルは細長い指で遺跡の入り口を示した。
「ここだ。地元の人間が噂する『眠れる巨人』の遺跡だ。危険だが、そこには古代の技術が眠っていると伝えられている」
ラーンは目を輝かせた。「よし!ついに大穴が見つかるかもな!」
イシェは眉をひそめた。「情報源が曖昧すぎる。危険すぎないか?」
「心配するな、イシェ。」テルヘルは冷たい声で言った。「私は計画を立てている。お前たちの役割は、遺跡に潜り、遺物を運び出すことだ。」
ラーンの興奮を抑えきれない様子を見たテルヘルは、小さくため息をついた。彼らには通訳が必要だった。言葉が通じない世界で、彼女は常に孤独な戦いを強いられていた。だが、彼らの力が必要だった。そして、彼らの力を利用して、ヴォルダンへの復讐を果たすのだ。
遺跡の入り口は、朽ち果てた石造りの門で塞がれていた。ラーンが力任せに門を押し開けると、埃っぽい空気が立ち込めた。薄暗い通路を進んでいくと、壁には奇妙な模様が刻まれていた。イシェは慎重に足取りを確かめながら、ラーンの背後からついていった。テルヘルは先頭を歩き、鋭い視線で周囲を観察した。
突然、壁の奥深くから轟音が響き渡った。ラーンは剣を抜いて構えた。「何かいるぞ!」
イシェも小さな daggers を握りしめ、緊張した様子を見せた。テルヘルは冷静に状況を分析し、手元の地図を広げた。
「これは罠だ。遺跡の守護者だ」
ラーンの顔色が変わった。「守護者?どんな奴だ?」
テルヘルは答えず、地図に描かれた記号を指さした。イシェは理解しようと努めたが、古代語の文字には通じなかった。
「通訳が必要だ…」テルヘルは呟いた。だが、今、その言葉は誰にも届かなかった。
遺跡の奥深くに、巨大な影がゆっくりと動き始めた…。