ラーンが遺跡の入り口に足を踏み入れた瞬間、薄暗い洞窟内に不気味な静寂が広がった。イシェは後ろから「本当に大丈夫なのかしら?」と不安そうに呟いた。ラーンの背中は、そんなイシェの言葉には耳を傾けず、興奮で震えていた。「今回は絶対何か見つかるぞ!」と彼は言った。
テルヘルは彼らを少し離れた場所でじっと観察していた。彼女の瞳は、洞窟の奥深くへと向けられていたが、そこに映るのは単なる石壁だけだった。しかし、彼女は何かを感じ取っていた。まるで、この遺跡に眠るもの、そしてそこに隠された真実を「透視」しているかのようだ。
ラーンの無謀な行動にイシェが慌てて後を追う。テルヘルは彼らを追いかけることなく、静かに立ち尽くしたままだった。彼女の目的は遺跡の財宝ではない。彼女が求めるものは、この遺跡が秘めた、ヴォルダンに関する真実だった。
洞窟深くでラーンとイシェが興奮気味に遺物を発見する中、テルヘルは壁の一面に刻まれた奇妙な模様に気づいた。それはまるで透明のインクで書かれたように、かすかな輝きを放っていた。彼女はゆっくりと手を伸ばし、その模様に触れた。
すると、彼女の視界が歪み始め、周りの風景がぼやけ始めた。そして、彼女は一瞬だけ、過去を見ることができた。そこにはヴォルダンが、まだ若く力強く、そしてどこか哀しい表情で、この遺跡に何かを隠す姿があった。
その瞬間、テルヘルは自分の存在意義を改めて確認した。彼女はヴォルダンとの因縁を断ち切るため、この遺跡の秘密を解き明かす必要があったのだ。そして、そのために必要なものは、ラーンとイシェの存在だった。彼らは、彼女が「透明」な真実を見つめるための道具なのだ。