ビレーの朝は薄暗い空の下、いつもより早く訪れた。ラーンがイシェを起こす音だけが、まだ静まり返る街に響いていた。
「今日はテルヘルのお姉さんと遺跡探さなきゃいけねえんだぞ、イシェ。いい日当もらえるって話だろ?」
イシェは眠ぼけの目をこすりながら言った。「ラーン、いつも大穴の話ばかりするけど、あの遺跡、本当に危険だって聞いたことあるでしょう?今回は違うんじゃないか?」
「大丈夫だって。テルヘルのお姉さんが言うなら間違いないさ。それに、俺が前に見つけた地図には、確かに大穴を示す記号があったんだ!」
イシェはラーンの熱意に押されるように立ち上がった。「わかったわかった。でも、約束したよね?今回は慎重に進めるって?」
「もちろんだ!今回はテルヘルのお姉さんの指示に従うからな。大丈夫だってば」
二人は朝食を済ませ、テルヘルの待つ場所へと向かった。テルヘルはいつも通り、冷静で透徹した瞳で二人を見つめていた。
「準備はいいか?今日は特に注意が必要だ。遺跡の奥深くには、ヴォルダンが何かを隠しているらしい。俺たちにとって危険な罠かもしれない」
ラーンの顔色を伺うイシェとは対照的に、ラーンは胸を張った。「大丈夫だ、テルヘルさん!俺たちに任せてください!」
テルヘルは小さく頷き、三人は遺跡へと足を踏み入れた。薄暗い洞窟の中を進んでいくにつれ、空気は重くなり、静寂がより深くなった。イシェは背筋に冷たいものが走った。
「ラーン、何か変だな…」
ラーンの顔色が一瞬青ざめた。「ああ、確かに…何か違うぞ」
その時、洞窟の奥から不気味な光が漏れてきた。三人は息を呑んで、その光の方へとゆっくりと進んだ。光源は巨大な石碑で、そこには複雑な模様が刻まれていた。石碑の表面は、まるで生きているかのように脈打つように輝き、その中心には、透き通るような青い結晶が埋め込まれていた。
「これは…!」
テルヘルは目を丸くして、石碑に手を伸ばした。その時、石碑から不規則な光が放たれ、三人は blinding light に包まれた。意識を失う寸前、テルヘルは石碑から聞こえてくるかのような、透徹した声が耳元で囁いた。「汝は…選ばれし者…」
三人が目を覚ますと、そこは遺跡とは全く違う場所だった。広大な草原が広がり、空には二つの月が輝いていた。彼らの前に、白い翼を広げた巨大な鳥が現れた。その瞳は、まるで人間の知性を感じさせるほど透徹していた。
「ようこそ、選ばれし者たち…」