日差しが容赦なく照りつける中、ラーンとイシェは荒れ果てた遺跡の入り口に立っていた。埃っぽい風が吹き抜けて、彼らの髪を撫でた。
「ここか？なんか…妙な感じがするぜ」
ラーンの眉間にしわが集まった。いつもなら冒険心を燃やして遺跡に入る彼だが、今日はどこか落ち着かない様子だった。イシェは彼の様子を見つめながら、小さく頷いた。
「確かに…いつもと違う雰囲気だね。でも、テルヘルがここに来るってことは、何かあるはずだ」
テルヘルは、彼らの前に立ち、逆光の中に立っていた。その姿は細部までくっきりとは見えず、影だけが際立っているように見えた。彼女は鋭い視線で遺跡を見つめ、口を開いた。
「内部構造は複雑だが、目的の遺物は中央部に存在するようだ。準備はいいか？」
ラーンの緊張感が増した。テルヘルの言葉に何か不吉な予感を感じたのだ。イシェはラーンを軽く押すようにして、遺跡へと歩み始めた。
遺跡内部は薄暗い。わずかに差し込む光が埃を舞い上げ、空気が重苦しい。足音だけが響く静寂の中、彼らは慎重に進んでいった。
「ここ…なんか不気味だな」
ラーンの声が震えていた。イシェは彼の肩に手を置き、彼を励ました。しかし、彼女の心にも不安が広がっていた。
やがて、彼らは中央部にたどり着いた。そこには、巨大な石棺が安置されていた。その周りを、奇妙な紋様で飾られた壁画が取り囲んでいた。
「これが…目的の遺物か」
テルヘルは石棺に手を伸ばした。その時、壁画から赤い光が放たれ、部屋全体を赤く染めた。同時に、石棺から不気味な音が響き渡った。
逆光の中に浮かび上がるテルヘルの顔には、わずかに狂気が宿っていた。
「始まったか…ついに」