「おい、イシェ!またあの遺跡か?」ラーンが眉間にしわを寄せながら言った。日差しが容赦なく照りつけるビレーの広場から、荒れ果てた山道へと続く入り口を見つめるラーンの視線は、どこか厭けがちだった。
「あの遺跡にはまだ探索してない場所があるって聞いたよ。テルヘルも興味を示してたし」イシェは冷静に答えた。彼女の目は、いつも通り冷静に地図を眺めていた。「それに、今回は報酬がいいらしいじゃないか。」
ラーンはため息をついた。「報酬の魅力には目がないってのは分かってるけどな…結局、大穴になると思える遺跡なんて見つからないんじゃないか?」
イシェは少しだけ笑った。「そうかもしれない。でも、可能性がある限り探すしかないでしょう?それに、この街で暮らすにはお金が必要だしね。」
テルヘルが合流してくるのが早かった。「準備はいいですか?」彼女は鋭い眼光で二人を睨みつけた。「今回は特に慎重に。あの遺跡はヴォルダン軍の監視下にあり、危険な罠が仕掛けられている可能性があります。」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…またあの連中の影が出てくるのか」彼は剣の柄を握りしめ、不快な表情をした。
イシェがラーンの肩を軽く叩いた。「大丈夫よ、ラーン。今回はテルヘルがいるから安心だよ。」彼女はそう言って、テルヘルの指示に従い遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内部は薄暗く、湿った冷気が漂っていた。彼らは慎重に足音を立てないように進み、石畳の道を進んでいった。壁には奇妙な模様が刻まれており、時折不気味な音が響き渡る。
「何かいる…!」ラーンの声が急に高くなった。彼は剣を抜き、周囲を見回した。「誰だ?出てこい!」
しかし、そこには何もいなかった。イシェは冷静に状況を判断し、「気のせいじゃないか、ラーン。落ち着いて」と声をかけた。
テルヘルは眉間にしわを寄せながら、壁に刻まれた模様をじっと見つめた。「これは…」彼女は呟き、少しだけ顔色が変わった。「これはヴォルダン軍が使用する暗号だ…」
その時、突然の爆音が響き渡った。石塵が舞い上がり、視界が一瞬で真っ白になった。
「逃げろ!」テルヘルの叫び声がかすかに聞こえた。ラーンはイシェの手を強く掴み、近くの通路に飛び込んだ。後ろから追いかけてくる敵の姿が見えたが、彼らは迷路のような通路の中に逃げ込んだ。
「どこだ…?ここは何処だ…?」ラーンの心臓は激しく動いていた。イシェの顔も蒼白で、息を切らしていた。
「落ち着け!ここはヴォルダン軍が使用している秘密基地の一部だ…」テルヘルは落ち着きを取り戻し、冷静に状況を説明した。「今、我々は逃げ場を失っている。ここは地下深くにあるため、地上に戻るには時間がかかる。」
ラーンはイシェと顔を見合わせた。「つまり…逃げられないってことか?」彼は絶望的な表情を浮かべた。
「違う!まだ希望はある!」テルヘルは力強く言った。「この基地には、ヴォルダン軍が隠した秘密があるはずだ。それを利用すれば、我々は脱出できる!」