「よし、入ったぞ!」ラーンが遺跡の入り口に足を踏み入れようとした瞬間、イシェが彼の腕をつかんだ。
「待て、ラーン!あの崩落現場は最近のもんじゃないか?様子を伺った方がいい。」
ラーンの顔は曇った。「またか、イシェ。そんな慎重にならなくてもいいんだよ。大穴が見つかるかもしれないんだぞ!」
イシェはため息をつき、ラーンの腕を離した。「わかった、わかった。でも、何かあったら責任は取れないからね。」
テルヘルは後ろから二人に声をかけた。「二人とも落ち着いて。遺跡の調査には時間が必要だ。焦らず進もう。」彼女の冷たい視線に、ラーンとイシェは互いに頷き合った。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には不思議な文様が刻まれており、時折、かすかな光が揺らめいた。彼らは慎重に進みながら、周囲をくまなく調査した。
「ここ、何かあるぞ!」ラーンの声が響き渡り、イシェとテルヘルは慌てて彼の元へ駆け寄った。ラーンの指さす方向には、壁に埋め込まれた石棺があった。
「これは…!」テルヘルが目を丸くする。「古代の王家の墓だ!」
興奮したラーンが石棺の蓋を開けようとした瞬間、背後から不気味な音が響き渡った。石棺の近くから、黒い影が立ち上がり、鋭い爪を磨いた。
「何だ!? 」ラーンの剣が光り、影に向かって斬りかかった。しかし、影は素早く動き、ラーンの攻撃をかわした。
イシェは冷静に状況を分析し、「あれは…ゴーレム!石でできた生き物だ!」と叫んだ。
テルヘルは落ち着いて指示を出す。「ラーン、イシェ!ゴーレムの注意を引きつけろ!私は逃げ道を探す!」
三人は協力してゴーレムと戦い始めた。ラーンの力強い剣撃はゴーレムにダメージを与えたが、その頑丈な体はなかなか倒れなかった。イシェは素早い動きでゴーレムの攻撃をかわしながら、隙をついて攻撃を加えた。
しかし、ゴーレムの力は圧倒的だった。三人は次第に追い詰められ、逃げ道を探そうとするテルヘルさえも危険な状況に陥った。
その時、崩落現場から轟音が響き渡り、遺跡の一部が崩れ始めた。ゴーレムは崩落する遺跡に飲み込まれるように消滅し、三人は何とかその場を脱出した。
崩壊した遺跡の入り口から外に出ると、彼らは息を呑んだ。ヴォルダンの兵士たちが遺跡を取り囲んでいたのだ。
「逃げろ!」テルヘルが叫びながら、ラーンとイシェの手を引っ張り、近くの森へ走り込んだ。
三人は森の中を必死に走り続けた。ヴォルダン軍の追手はすぐ後ろに迫っている。彼らの逃亡劇は始まったばかりだった。