「よし、今回はあの崩れた塔だな。噂によると奥に未踏の部屋があるらしいぞ」
ラーンの声はいつも通りの興奮に満ちていた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を広げた。
「またしても無計画な…あの塔は危険だって聞いたことがあるわよ。罠が仕掛けられている可能性もあるし、ヴォルダンからの追討も考慮すべきでしょう」
イシェの言葉にラーンは軽く笑った。
「大丈夫大丈夫、俺たちにはイシェがいるじゃないか。お前がいればどんな罠も突破できるさ!」
イシェはため息をつきながら、地図をしまう。ラーンの楽観的な態度に振り回されるのも疲れたが、彼といる時だけは心が躍るものがあった。
その日の遺跡探索は予想以上に困難だった。崩れかけた石畳を慎重に進む二人に、突然巨大な蜘蛛が現れたのだ。イシェの機転で辛くも逃げ切ったものの、ラーンは足を負傷してしまい、さらに進むには無理だと判断せざるを得なかった。
「 dammit...」
ラーンの言葉が切れていく。イシェは彼の手を握りしめ、励ますように言った。
「大丈夫、今は安全な場所に避難しよう。俺たちはまだ希望がある」
しかし、その時だった。背後から冷たい声が響き渡った。
「逃げ場はない。お前たちにはもう未来はない」