「準備はいいか？」テルヘルが鋭い視線でラーンとイシェの顔を見回した。二人は互いに頷き、深く息を吸った。ビレーから少し離れた遺跡の入り口に立っていた。
「今回は大物が入っているらしいぞ」ラーンの興奮を抑えきれない声に、イシェは眉間に皺を寄せた。「情報源は確かなのか？」テルヘルは冷静に尋ねた。「あの男は嘘をつくことなどない」ラーンは自信満々に言ったが、イシェは彼の言葉に疑いの目を向けていた。
遺跡の内部は薄暗く、湿った空気が肌にまとわりつく。足元には崩れかかった石畳が広がり、時折風に乗って砂埃が舞い上がる。ラーンの持つランプの火が揺らめき、壁に描かれた奇妙な模様を浮かび上がらせる。「ここには何かある」イシェは静かに呟いた。彼女は壁の模様に何かを感じ取っていた。
彼らは慎重に遺跡の奥へと進み、やがて広間のような場所に出た。中央には巨大な石棺が置かれ、その周りを奇妙なシンボルが刻まれた柱が囲んでいた。ラーンは興奮気味に石棺に近づき、手を伸ばそうとした。「待て！」テルヘルが彼を制止した。「何か罠があるかもしれない」イシェも同意するように頷いた。
テルヘルは慎重に石棺の周りを調べ始めた。すると、彼女の指先に触れた石柱から微かな光が放たれ、壁一面に描かれたシンボルが輝き出した。同時に、部屋の奥の方から不気味な音が響き渡った。
「これは…」イシェが言葉を失う。壁のシンボルの組み合わせは、彼女がかつて見た書物で目にしたものと酷似していた。それは「追放者」に関する伝説に記されたものだったという。
その時、石棺の蓋が開き、中から黒い煙が立ち上った。煙の中に浮かび上がる影は、巨大な怪物だった。その目は赤く燃え上がり、鋭い牙を剥き出しにして三人に襲いかかってきた。ラーンは剣を抜き、イシェは素早く動き回って攻撃をかわす。テルヘルは冷静に状況を見極めながら、隙を突いて攻撃する。
激しい戦いの末、彼らはなんとか怪物に勝利した。しかし、その代償は大きかった。イシェが深手を負い、ラーンも体中に傷を負っていた。テルヘルは疲弊しながらも、石棺の中にある遺物を回収した。「これは…」彼女は驚きの声を上げた。石棺の中にあったのは、単なる宝ではなく、何か別のものだった。それは「追放者」の封印を解く鍵だったのだ。