「おい、イシェ、どうだ？あの石像、なんか怪しくないか？」ラーンの鼻息が荒くなった。ビレーの遺跡探査隊として数年連れ添ってきたイシェは、彼の興奮を抑えようとため息をついた。「ラーン、またそんなこと言わないで。あれはただの石像に決まってるわ」
だがラーンの目は輝いていた。「いや、違うんだ！この彫刻…どこかで見たことがある気がするんだ！」
彼は石像の顔に手を伸ばそうとしたその時、地面が激しく震え始めた。石像の上部から奇妙な光が放たれ、周囲の空気が熱気を帯びてきた。イシェはラーンの腕を掴んで引き寄せ、「逃げるぞ！」と叫んだ。
その時、石像の目が光り輝き、巨大な影が彼らを包み込んだ。恐怖で体が硬直するラーンをイシェが引っ張る。「何だこれは！？」
影から姿を現したのは、漆黒の鎧をまとい、巨大な剣を持った謎の騎士だった。「汝らは…この地に踏み込んで来た者か」その声は機械的で冷酷なものだった。「汝らはこの地を去れ。さもなくば…」
ラーンは恐怖で言葉を失い、イシェは必死に状況を判断した。彼らは一体どこにいるのか？そしてこの騎士は何者なのか？
「待ってください！私たちはこの遺跡を探検するだけで…！」イシェの言葉が途絶える前に、騎士は剣を振り下ろした。「汝らの罪は重い。今ここに裁かれよ。」
その時、突然、空から声が響いた。「やめてくれ！彼らは私の仲間だ！」
その声の主はテルヘルだった。彼女は必死に駆け寄り、騎士の前に立ちふさがった。「彼らを追放するつもりか？私は彼らの雇い主だ。責任は私に負う」
騎士はテルヘルの言葉に一瞬躊躇した。彼の視線はラーンとイシェに注がれた。「汝らは運がいいようだ。今回は許してやる。だが二度とこの地に足を踏み入れるな」騎士はそう言い残し、再び影の中に消えていった。
三人は息を切らし、互いの顔を見合わせた。テルヘルの顔が引きつっていた。「一体…何だったのか…」ラーンの声は震えていた。イシェは深くため息をつき、「とにかく安全な場所に移動しよう」と呟いた。
彼らを襲った影の正体、そしてテルヘルが隠している秘密。謎は深まるばかりだった。